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1頭でいい宇宙の馬

2023年11月27日
 美しく、ずっと見ていられそうだ。“宇宙好き”にはたまらない写真3点が、8日付の本紙に載った。欧州宇宙機関(ESA)が今年7月に打ち上げた、ユークリッド宇宙望遠鏡で撮影したカラー画像である。

 その一つ、オリオン座の「馬頭星雲」は、まさに雲から頭を出した馬のよう。宇宙が作り出した壮大な芸術だ。今後、同望遠鏡での観測を通じ、正体不明の暗黒物質ダークマターや暗黒エネルギーなど宇宙の謎に挑むという。とても有意義なプロジェクトである。

 一方で同じ科学力を駆使して「打ち上げたもの」でも、国際社会の緊張を高めるだけのものもある。かの国が21日に打ち上げた軍事偵察衛星などはまさにそれだ。この衛星の運搬ロケットは「千里馬1型」というらしい。宇宙の「馬」はあの美しい星雲だけで十分である。

 高度な文明の利器の功罪が使う人間によって左右されるという点において、思い浮かぶのがダイナマイトだ。人間社会に大きく貢献した一方、多くの人命を奪ってきた。発明者のアルフレッド・ノーベルは、これが戦争に使われることを分かっており死後の自身の評価を非常に気にしていたという。

 そのため彼は1895年のきょう「ダイナマイトで得た富を人類に貢献した人に与える」という遺言状を残し、1901年の同じ11月27日に第1回ノーベル賞授賞式が行われた。残念ながら彼の死後130年近くたった今も彼の発明品は人の命を奪っている。

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