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偽りの正義と承認欲求

2023年11月24日
 「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際…」

 1段落目に収まりきれなかった。冒頭の文の最後は「~に関する特別措置法」で終わる。2001年の米同時多発テロを受け日本政府が成立させた、いわゆる「テロ特措法」である。法律や条例は正確さを期すため時としてものすごく長い名前になることがある。

 この法律を含め、100文字を超える名前のものはいくつかあるという。さてこの男は、そんな長い名前とは対照的な極めて短い名前の法律「名誉毀損罪」で逮捕された。公演チケットの不正転売の疑いをかけ、無関係の女性を追いかけ回す動画を投稿した容疑者である。

 ネット上に顔をさらされた女性の苦痛はいかばかりか。その1週間後にはインターネット上で知り合った男に覚醒剤購入をそそのかした上で警察に逮捕させ、その場面を撮影した男2人が覚醒剤取締法違反の教唆容疑で逮捕された。「私人逮捕系ユーチューバー」。彼らはそう呼ばれているらしい。

 嫌な響きだ。冒頭の法律名よろしく彼らの本質をとらえた修飾語を「ユーチューバー」の前に付けてはどうか。「偽りの正義感と、つまらない承認欲求を満たし、それに付随する利益を狙った浅はかな行為によって…」。やはりこの段落には収まりきれない。

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