思い込みが招く罪
2023年11月18日

昭和から平成までおよそ20年にわたり放映された「まんが日本昔ばなし」にもなった、福島県の「狐に化かされた彦べえ」という民話。臆測や思い込みが「命」を奪うという取り返しのつかない結果を招く物語は、新美南吉の「ごんぎつね」に通じるものがある。
イスラエル軍が15日、パレスチナ自治区ガザ北部にある地区最大級のシファ病院に突入した。イスラム組織ハマスに対する掃討作戦という。同軍は「病院にハマス司令部がある」などと主張。突入以降、病院内でハマスの作戦指揮所や武器などを発見したと発表している。
13日には別の病院の地下で見つけたという「ハマス拠点」の映像を公表したが「不自然な点がある」という指摘もあり、今回もどこまでが真実か分からない。まさか臆測や思い込みに沿った既成事実をつくろうとしているわけではないだろうが…。いずれにせよ、病院を戦場にしていいはずがない。
くだんの民話では、若者は懺悔(ざんげ)し頭を丸めるが、実は娘もおばあさんもキツネで赤ん坊は幻で…。ひどい目に遭った若者だが、人を殺していなかったのが救い。シファ病院では、電力不足で赤ちゃんを含む三十数人が亡くなっているという。こちらは現実だ。