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金星は未来の地球

2023年7月31日
 明けの明星、宵の明星の名でも知られ、地上からもよく見える金星。明けの明星は「明星(あかぼし)」、宵の明星は「夕星(ゆうずつ)」とも呼ばれ、古くは「夕星の か行きかく行き大船の―」と、柿本人麻呂の歌にも出てくる。

 地球の隣にあり、大きさもほぼ同じ(地球よりわずかに小さい)ことから「地球の双子星」などと言われてきた。だが、実際は似ても似つかぬ星であることが分かっている。豊かな水と生命に満ちた地球に対して金星は“灼熱(しゃくねつ)地獄”。地表の温度は500度近い。

 要因の一つが「極度の温室効果」である。金星の大気は95%が二酸化炭素で、この温室効果ガスが太陽の熱を逃がす割合を大幅に減らしているのだ。また、遠因として金星が地球より約4千万キロも太陽に近いこと、さらに自転周期が243日と極端に遅いことなどがある。

 太陽が今後高温になっていくのに従い、地球も数億年後には金星のような星になるという。仕方ないことだが、人間の手でそれを加速させる愚は絶対に避けたい。今月の世界の平均気温が観測史上最も高くなる見通しとなり、国連のグテレス事務総長が「地球沸騰化の時代が到来した」と警告した。

 「人類の責任」とも述べたグテレス氏は、一方で「まだ最悪の事態は防げる」とも。「明け」にしろ「宵」にしろ、明星が見られるのは一日の中でも比較的涼しい時間帯だ。それを酷暑の中でめでるような事態を招かないため課題は山積しているが時間はない。

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