94歳車との別れ
2023年7月29日
今週の本紙俳句欄に「老老に朗朗ならず梅雨の月」とあった。宮崎市の川上力さん作。投稿歴の長い川上さんの作品は紙面で時々目にしていた。川柳も作っておられる。「老いるにも頭が要って金も要る」。
「生きている証しの痛み持ち歩く」。川柳の近作から。老いとはどんなものなのか。漠然とした問いに、なかなか起伏があって面白いよと答えをもらった気分だ。最近、ラジオパーソナリティー伊野啓三郎さんから連絡を頂き、久しぶりに宮崎市の自宅を訪ねた。
早朝のMRTラジオで長く洋楽を紹介してきた94歳の名物司会者。「アンクルマイク」と言えばぴんとくる方も多いだろう。運転歴64年だったが今月、娘さんたちの忠告を聞き入れ車を手放した。スーパー3軒を回り、楽しみな月1の理容室も自分で運転して出かけていた。
亡妻との思い出も愛車に詰まっていた。車が引き取られた夜、寂しさのあまり涙したという。不便さ以上に「自分に限界がある」ことを突きつけられて心が乱れた―。気持ちを鎮めるため書き上げた原稿用紙10枚に、94歳の揺れる心の機微があった。免許返納する県内高齢者は年間4千人以上に上る。
返納後の交通手段の確保は大事な支援だが、それで万全ではないのだろう。大切な物や人を一つずつ失っていく悲しみにもっと関心を払わなければ。何歳になっても心はいつも揺れ動く。川上さんは、こんな川柳も詠んでいた。「人生はあの道この道迷い道」
「生きている証しの痛み持ち歩く」。川柳の近作から。老いとはどんなものなのか。漠然とした問いに、なかなか起伏があって面白いよと答えをもらった気分だ。最近、ラジオパーソナリティー伊野啓三郎さんから連絡を頂き、久しぶりに宮崎市の自宅を訪ねた。
早朝のMRTラジオで長く洋楽を紹介してきた94歳の名物司会者。「アンクルマイク」と言えばぴんとくる方も多いだろう。運転歴64年だったが今月、娘さんたちの忠告を聞き入れ車を手放した。スーパー3軒を回り、楽しみな月1の理容室も自分で運転して出かけていた。
亡妻との思い出も愛車に詰まっていた。車が引き取られた夜、寂しさのあまり涙したという。不便さ以上に「自分に限界がある」ことを突きつけられて心が乱れた―。気持ちを鎮めるため書き上げた原稿用紙10枚に、94歳の揺れる心の機微があった。免許返納する県内高齢者は年間4千人以上に上る。
返納後の交通手段の確保は大事な支援だが、それで万全ではないのだろう。大切な物や人を一つずつ失っていく悲しみにもっと関心を払わなければ。何歳になっても心はいつも揺れ動く。川上さんは、こんな川柳も詠んでいた。「人生はあの道この道迷い道」