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白髪揺れる里山

2023年4月26日
 スズメは人間の生活に深く関わっている野鳥だ。集団移転した無人の集落からは、スズメも姿を消すという。人に頼っているわけではないが、里山に自生する野草のオキナグサも農村の生活と関わりが深い。

 日当たりのいい草原に自生。かつては各地にあった自生地は農作業によって維持されていた面がある。人為的に下払いされた場所が適地だった。しかし中山間地の開発や人口流出が進み、山や田畑の管理が行き届かなくなってこの植物も激減。今は絶滅危惧種だ。

 貴重な自生地の一つ、宮崎市高岡町の和石地区に先週末、オキナグサを見に行った。紫色の花はランプのかさが被さるように下を向いて、どこかつつましい。高さ10センチくらい。数株ずつ固まって群生している。地元の人が目印を立てているので足元に気を付けて見学する。

 花期は終盤だが、花が終わって白く長い毛に覆われている今も見ごろといえる。というのも、そのふさふさの毛がお年寄りの白髪に例えられて、名前の由来に納得いくからだ。あちこち寄り添って白い毛を風に揺らしている様子は、幹線道路から外れてぽっかり広がるこの里山の雰囲気によく似合う。

 野山の管理にはボランティアも加勢するという。ちなみに見に行きたいと思った人もいると思うが、詳細な場所は控えたい。集落を訪ねたら地元の人に尋ねた方が楽しい。皆親切に教えてくれる。最近伐採や盗掘もあったそうでマナーには十分気を付けたい。

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