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柳も花も、そして人も

2022年12月31日
 2022年も残すところきょう1日。今年はスヌーピーの生みの親であるチャールズ・M・シュルツさんの生誕100年の年でもあった。そのせいか、例年以上にいろんな場所でスヌーピーを見た気がする。

 スヌーピーが登場する人気漫画「ピーナッツ」の翻訳を長年手がけたのは、詩人の谷川俊太郎さんだ。わずか3、4コマの中で交わされるキャラクターたちの言葉はシンプルながら”深い”。その中から「禅」に通じるものを見いだし集めた本が昨年出版された。

 枡野俊明監修「心をととのえるスヌーピー」(光文社)。収録作の一つ。チャーリー・ブラウンがルーシーに「人間がそれぞれに違ってるってのは、ほんとにいいことだ」と話しかける。その作品にあてがわれた禅語は「柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)」だ。

 「柳も花も、それぞれが個性を持ち、かけがえのない命を全うしているからこそ美しい」とした上で、互いが互いを素の形で認め尊重し合うことの大切さを説いている。振り返れば、自分とは違う考えや価値観、嗜好(しこう)といった個性を認めないことに起因するトラブルや悲劇が、今年も数多く起きた。

 一方でそうした圧力に、はっきりと「NO」を突き付ける事象が見られるようになってきたのも事実だ。誰もがありのままの自分に肯定感を持つことができ無理せずに生きられる。来年はそうした動きがさらに加速する年となることを願いつつ―よいお年を。

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