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冬至のカボチャ

2022年12月22日
 歌人の窪田空穂(くぼたうつぼ)に「冬至の南瓜(かぼちゃ)」というエッセーがある。知人との雑談の中で冬至にカボチャを食べる風習が全国共通ではないことを知って戸惑い、周囲にその人たちの郷里ではどうかを尋ねるという内容。

 そのエピソードに続いて空穂は、カボチャの語源が国名のカンボジアであることや、日本で食べられるようになったのが1500年代の終わりごろであることなどを紹介。神饌(しんせん)としての冬至のカボチャを食べ、冬を健康に過ごす風習がすたれることを嘆いている。

 育てている同僚によると、カボチャは種さえまけば放っておいてもどんどん育つのだという。栄養素のみならず、そんな生命力のあるものを食べること自体が健康維持の面で理にかなっているのだろう。また開運の面から「冬至のカボチャ」について教えてくれた人もいた。

 冬至に「ん」が二つ付くものを食べると、運がよくなると言われているらしい。「れんこん」「にんじん」「ぎんなん」…。そして、カボチャの異名は「なんきん」だ。カボチャの最盛期は一般には夏だが、宮崎市生目地区特産の伝統野菜「やまいき黒皮かぼちゃ」は12月に出荷シーズンを迎える。

 〈身を乗せて冬至南瓜を切る夕べ〉(三村武子)。カボチャは皮が硬いのも特徴だ。〈刃を当てられ冬至南瓜の力むなり〉(檜紀代)は、カボチャが抵抗しているようで面白い。きょうはその冬至。そんな光景が全国のあちこちの家庭で見られることだろう。

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