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それぞれ走る理由

2022年12月11日
 怠け者かもしれないが高校の持久走の時から走っている間考えているのが「やめる理由」。理由は次々浮かぶ。「右ひざが痛くなった」「餌切(えぎ)れ(宮崎弁でエネルギー不足のこと)した」「もう十分だろ」など。

 我ながらナイスな理由が「そもそも人間の体は走るようにできているか」。「化石が語るサルの進化・ヒトの誕生」(高井正成・中務真人著)によると、直立二足歩行を行う動物は人間だけという。直立とはまっすぐ立つことで脊柱と体を支える後足が垂直になる。

 ペンギンが歩くように二足歩行の動物は珍しくない。だがペンギンは股関節が深く屈曲していて直立する下肢はひざから下のみだ。人類の祖先は樹上から地上に降りて、直立二足歩行を始めた。理由として食物や武器、乳児の運搬、道具の製作、投てきなどの仮説がある。

 威嚇効果、採食なども考えられる。明記されてないが、走り始めた理由もその延長上にあるのだろう。人間だけの特権、と思えば誇らしい。というわけで「人間の体は走ってOK」と納得いくかどうか分からないが、考えているうちに大抵なんとかゴールに着いているから人間の潜在力に感心する。

 走る理由を考えた方が楽しいのは確か。自分のため、家族や地域のため。こっちの方が思いつく。青島太平洋マラソンは今日午前9時号砲。参加者全員に走る理由がある。完走を祈るが無理は禁物。故障するまで体を酷使する理由は進化にはないはずだから。

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