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体が覚えている

2022年8月5日
 体が覚えている―といえば、例えば楽譜なしでもピアノを弾けるとか、スポーツでさまざまな状況に自然に反応するとか、いろんな場で使われる言い方だ。先日、これが食事にも当てはまることに気付いた。

 安くておいしいお気に入りの食堂で、これまたいつもの定食を注文した。空腹に任せ無心で箸を進めていくと―「ん?」。何かおかしい。おかずを食べ終えたときに普通なら同時に食べ終えているはずのご飯が余ってしまったのだ。不思議な感覚に陥ってしまった。

 考えていて、はたと気がついた。「おかず」の量が減っていたのか…。元々ボリュームのある店なので気付かなかった。ただ「超」が付くほどの常連の身としては体が主食、副食を食べるペースを覚えていたのだろう。まあしょうもないことだが、妙に感心してしまった。

 と同時に、そこから考え込んでしまった。このお店もきっと悩んだのだろう。あらゆる物が値上げ、値上げの昨今である。食べ物屋さんも材料の値上げに苦しんでいる。商品の質は下げられない。残る選択肢は材料費のアップ分を商品に転嫁するか、価格据え置きで量を減らすかのどちらかだろう。

 今も多くの店が、その二者択一に頭を抱えているのではないか。どちらにしろ、やむを得ないこと。食べるペースは通い続ける中でまた”体が覚えて”いくのだろう。「個人的にこの店がなくなると困ります。頑張ってください」と心の中で願いつつ店を出た。

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