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旅行かばん転がす首相

2022年5月13日
 フィンランドを代表する物語「ムーミン」のシリーズに「ムーミン谷の夏まつり」がある。原題が「危険なミッドサマー」。ミッドサマーとは欧州で夏至のこと。夏至のころに起きた大洪水から話が始まる。

 家屋が流されたムーミン一家。それでも流されてきた劇場に移り住んで演劇をすることに。長く厳しい冬を越えて、夏の到来を告げる夏至を祝う気分が現われているようだ。何度も大国の侵略に遭って不屈の闘志で独立を守った歴史も反映しているかもしれない。

 今年の夏至は6月21日だから、まだひと月以上はあるが、今年の同国は本当に危険な夏至の予感がしているに違いない。ロシアのウクライナ侵攻を受けて北大西洋条約機構(NATO)加盟の機運が高まる。そのフィンランドからマリン首相が来日、岸田首相と会談した。

 成田空港に降り立った36歳の女性首相は、自分で大きな旅行かばんを転がして移動していたので驚いた。国の規模も慣習も違うので比較は難しいが、秘書や随行員が身の回りの世話をする日本の政治家とは雰囲気が違う。必要があれば素早く決断し、自ら動いていく姿勢を象徴しているようだった。

 精力的に発信するウクライナのゼレンスキー大統領もそうだが、トップが大国に引けを取らない気概を見せていると国民は心強い。周辺諸国がロシア包囲網を強めることはプーチン大統領には誤算だったはず。長く厳しい冬を自ら招いたことに気付くべきだ。

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