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襲いかかるかぎ爪

2021年7月22日
 フランスを代表する印象主義の作曲家ドビュッシーの管弦楽曲「海」。葛飾北斎の版画「冨嶽三十六景」の中でも代表的な「神奈川沖浪裏」にインスピレーションを受けて作曲したことはよく知られている。

 具体的に語っていないが、楽譜表紙にこの絵を用いているので、富士山を大波がのみ込む斬新な構図に魅了されたのは確かなのだろう。きらきらと音符が輝くような曲調は、何か獣のかぎ爪がたくさん襲いかかってくるような、ユニークな大波の表現にも重なる。

 どこの絵画展か忘れたが、北斎を特集していて、この絵の謎に迫るドキュメント映像を流していた。実際の波を肉眼で見ても、こういう「かぎ爪」は認識できない。ところが一眼レフカメラの、かなりの高速シャッターで波を撮ったところ「かぎ爪」が現れたので驚いた。

 常人には見えないものまで画家の鋭い観察眼はとらえていたことになる。映像の中で一流サーファーが、波の同様の表情を感じることがあると語っていた。漁業者ら海に関わる仕事の人は実感しているはずだ。特にこの季節、天気が良くても時折、かぎ爪をむき出しにして高波が押し寄せることを。

 いわゆる土用波。遠く南方で発生した台風の影響だ。今日は海の日。19日からずれたが、海に最も親しい季節だ。暦上は4連休の初日となる。県内の主な海水浴場は海開きしたが、海はかぎ爪を隠している。引きずり込まれないように十分注意して遊びたい。

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