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沢村忠

2021年4月8日
 例えば1970年の10月第3週の新聞テレビ面。月曜の午後7時からキックボクシング、8時からプロレス中継。プロレスはさらに水、金曜と1日置きだ。そして日曜午後7時からは再びキックボクシング。

 アニメ番組もしかりで月曜午後6時からは「タイガーマスク」、水曜午後7時は「あしたのジョー」。そして木曜日午後6時からは「キックの鬼」。1週間を通してこれでもかというくらいキックボクシング、ボクシング、プロレス関連の番組が放映されていた。

 街頭テレビに映し出される力道山の試合に黒山の人だかりができたのは、50年代半ば。70年はテレビの草創期は過ぎていたが、まだこうした50年代の格闘技番組に対する熱気のようなものが残っていたのか。そんな空気の中で登場したのがキックボクサーの沢村忠さんだ。

 前述したアニメ「キックの鬼」のモデル。当時の「スポ根漫画」に実在の選手が登場することはよくあったが、選手本人が主人公というのは珍しかった。代名詞となった「真空飛び膝蹴り」で次々と対戦相手をマットに沈め、日本中を沸かせた。アニメも30%超という驚異的視聴率をたたき出した。

 73年にはプロ野球で三冠王に輝いた王貞治さんらを抑えて日本プロスポーツ大賞を受賞。引退後は、あまりメディアに登場することはなかった。先月26日に亡くなったという。高度成長期にこの国にあふれていた活気と重なるまさしく昭和のヒーローだった。

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