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池江選手の復活

2021年4月6日
 「神は乗り越えられない試練は与えない」とは、自己啓発本などでよく見かける言葉。聖書の「コリント人への手紙」にある「(神は)耐えられない試練にあわせることはなさいません」から来ているとか。

 苦境にある人には励みとなる言葉である。一方で、そう断言されてしまうと、乗り越えられない人は自分をだめな人間だと思いかねない。この言葉に異を唱えたのが「上馬(かみうま)キリスト教会ツイッター部のキリスト教って、何なんだ?」(ダイヤモンド社)なる本だ。

 同書いわく、聖書の英語版では「試練」に当たる部分は「テンプテーション」となっているが、これは元来「誘惑」という意味。「つらいこと」という意味での試練ではない…と。解釈はいろいろあるだろうが、幾多の試練に挫折した身としては、同書の主張に救われる。

 とはいえ、実際にはとてつもない試練を乗り越える不屈の人がいるのも事実だ。競泳の池江璃花子選手が、白血病での長期療養を経て五輪出場を決めた。当初目標にしていたパリ大会ではない。今夏の東京五輪である。4日の選考会を兼ねた大会で、400メートルメドレーリレーの選考基準を満たした。

 奇跡的というべき復活劇に、国内外から称賛の声が相次いでいる。「努力は必ず報われる」。これも冒頭の「神の試練」と同じく、聞き慣れた言葉だが今回彼女が発したそれは、これまでとは段違いの重みと説得力を持って聞く人々の胸に迫ったことだろう。

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