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黒板五郎の生き方

2021年4月4日
 「気がつけば今 五郎の生き方」。10年前、脚本家の倉本聡さんの舞台劇を取材するため訪れた北海道富良野市。併せて行ったテレビドラマ「北の国から」の関連施設で、何度も目にしたキャッチコピーだ。

 五郎とは、このドラマで田中邦衛さんが演じた黒板五郎のこと。物語は、五郎が幼い息子の純(吉岡秀隆さん)と娘の蛍(中嶋朋子さん)を連れて、富良野に住み始めるところから始まる。水道や電気すらない場所。そこであばら屋を修理し、川から水を引き…。

 大自然の中でたくましく、愛情深く生きる不器用な父親。「北の国から」は、主人公が田中さんだったからこそ、あれだけ味わい深い作品になった気がする。それは田中さん自身が、その素朴さや実直さなどにおいて五郎と重なるところが多かったからではないだろうか。

 10年前の富良野での取材の際、倉本さんは「(田中さんに)また一緒に何か作ろうよと誘ったが『体がついてこない』と言われた」と、残念そうに話していた。確かにこのころは映画、テレビ共にその姿を見ることはなくなっており、2010年公開の「最後の忠臣蔵」が最後の作品になったという。

 「北の国から」の放送開始から今年でちょうど40年。ドラマの中での五郎のエコロジカルな生活は、まさに今のSDGs(持続可能な開発目標)に通じるものだ。そうした「五郎の生き方」が見直されつつある中での五郎、いや田中さんの静かな旅立ちだった。

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