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デジャビュとジャメビュ

2021年1月14日
 日ごろよく使う言葉の対語でありながら、あまり使われないものがある。たとえば「彼岸」の対語の「此岸(しがん)」。さんずの川の向こうで仏様の世界である彼岸に対して、川のこちら側、要するに人間の世界だ。

 夕暮れ時を指す「たそがれ時」の対語で、明け方を意味する「かわたれ時」もそう。どちらも人の顔の見分けがつきにくい時間でたそがれが「誰そ彼」を語源にするの対し、かわたれは「彼は誰」の意味。しかし、たそがれ時に比べ、かわたれ時の知名度は低い。

 外来語にもある。フランス語で既視感を意味する「デジャビュ」。デジャ(すでに)+ビュ(見た)だ。その対語はジャメ(一度もない)+ビュ(見た)で「ジャメビュ」。初めてなのに前に見た気がするデジャビュに対し、見慣れたものが初めて見たように感じられること。

 きのう政府は、新型コロナ特別措置法に基づいて、福岡をはじめ大阪、京都、栃木など7府県に緊急事態宣言を追加発令した。現時点で政府は、宣言の全国への拡大を否定してはいるものの、もし「小出し」の対応から全国に拡大すれば「前にもあったような…」とデジャビュの感覚に襲われよう。

 先の3連休に、街中や郊外、夜の繁華街などの様子を車で見て回った。通常、昼時は満車の飲食店の駐車場がガラガラ。人がいない夜の街の光景は同じ場所とは思えず、まさにジャメビュだ。早く見慣れた光景を見慣れたものとして見られる日がきてほしい。

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