ホーム くろしお

雪、雪、雪

2021年1月12日
 津軽の雪 こな雪 つぶ雪 わた雪 みづ雪 かた雪 ざらめ雪 こほり雪―とは太宰治の小説「津軽」の冒頭の一節である。この部分を歌詞に織り込んだ新沼謙治さんの「津軽恋女」はヒット曲となった。

 雪に関する名前はどれほどあるだろうと調べたら、こんなものではなかった。谷崎潤一郎の小説にもある「細(ささめ)雪」。「撓(しおり)雪」は木の枝をたゆませて、後にそれがすべり落ちると「垂(しず)り雪」に。冒頭に出てくる「わた(綿)雪」より大きな塊で降るのは「牡丹(ぼたん)雪」。

 このほか薄く降り積もる「淡(あわ)雪」、一面に積もった「衾(ふすま)雪」、めでたいしるしとされる「瑞雪(ずいせつ)」、次の雪が降るまで消えずに残る「友待つ雪」など。時間の経過とともに変わる名前では降ったばかりの「新雪」、それが固くなると「こしまり雪」から「しまり雪」になる。

 寒が過ぎて降り納めとされる「涅槃(ねはん)雪」や、不朽の名曲のタイトルになった「なごり雪」などはロマンチックだ。こうした呼び名に風情を感じるのは、雪にほとんど縁がない土地に住む身ゆえの気楽さか。北国の人々にとって、雪は暮らし、最悪の場合は命までも奪うこともある自然の脅威となる。

 ここ数日の大雪により、北陸を中心に高速道で多くの車が長時間にわたって立ち往生。除雪作業中の転落や落雪で亡くなった人もいる。時期的に「涅槃雪」にはまだほど遠い。せめてこれ以上「どか雪」に苦しめられることのないよう南国から祈りを届ける。

このほかの記事

過去の記事(月別)