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セレンディピティ

2021年1月11日
 今はカリキュラムが詰まっていてあまりいないかもしれないが、中学生や高校生の頃、授業中によく脱線する先生がいた。そちらの方が話がおもしろくて、肝心の授業の中身よりよく覚えていることが多い。

 奨励はしないけど、そんな先生の方が卒業後も思い出すのは、脱線の内容がどこかで役に立ったり、味わいがあったりする経験が多いからだろう。本来の目的から外れた行為や、失敗から予想外の発見やすてきな出会いをすることを「セレンディピティ」と呼ぶ。

 たぶんこの言葉が一般的になったのは、昨年7月亡くなった外山滋比古さんの著書「思考の整理学」(1983年)で紹介されてからと思う。長い間、大学生たちのベストセラーだったように、今も学問の意義や将来の進路で悩む若者らにヒントを与える内容に富んでいる。

 成人の日。県内各市町村で開かれるはずの成人式が、コロナの影響で中止したり縮小したりしている。晴れ着で再会を喜び抱負を語り合う舞台を奪われた新成人に心から同情したい。ただ世の中が脱線に次ぐ脱線を強いられている状況下で、セレンディピティがあることに希望を見いだしてほしい。

 同書は学校をはじめ大人が敷いたレールに乗るだけの優等生は「グライダー人間」であり、自ら文化を創造する「飛行機人間」になれ、と説く。視界不良のまま一人で社会へ飛び出す新成人だが、暗雲を抜ければ自由に飛び回る大空が待っている。グッドラック!

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