ホーム くろしお

アンパンマンの正義

2020年10月15日
 空を飛び、おなかをすかせた子どもらにあんパンを配る丸顔のおじさん―。子どもに人気の漫画アンパンマンの原形であるキャラクターが初登場したのは、1968年に発表した大人向けの連作童話だった。

 怪獣を倒す強いヒーローが受けていた時代。原作者の漫画家、故やなせたかしさんは本紙に載ったインタビューで「悪いやつにも言い分はある」と違和感を抱き、自分が求める正義は何かを考えたという。得た答えが「飢えた子どもを助けることこそ正義だ!」。

 ひもじかった戦時中の体験、飢餓が深刻化するアフリカの惨状を思った。一番の被害者は自分で食料を得られない子どもたちだ。善悪や敵味方の二元論にこだわるより、まず子どもたちを救う。自分の顔をちぎって食べ物を与えるアンパンマンに強い信念が託されている。

 「紛争があれば飢餓は撲滅できず、飢餓がなくならなければ平和は見いだせない」。今年のノーベル平和賞受賞が決まった世界食糧計画(WFP)の訴えと活動もアンパンマンの正義に通じよう。新型コロナウイルス大流行で深刻な飢餓に苦しむ人々の数が倍増し、3億人近くに達する恐れがある。

 WFPへの協力方法はいくつかあるが、フードロス対策に取り組み、身近な子ども食堂を支援することも国際的な食料問題の解決と無縁ではない。紛争地域への支援は容易ならない。だが多くの人が少しアンパンマンの勇気を持って踏み出せば正義に近づく。

このほかの記事

過去の記事(月別)