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菅政権スタート

2020年9月17日
 第2次世界大戦中、ドイツの捕虜になったルーマニア人の男が脱走を図る。脱走前に、男はユダヤ人のラビ(宗教指導者)からハンカチに包んだ一切れのパンをもらう。そしてラビは、一つの忠告を与える。

 「そのパンはできる限り食べずに持っていなさい」―。逃げる途中、男は何度も危機に陥るがこのパンだけを心の支えに、飢えの中で食べたい誘惑にも負けず持ち続け、ついに家へたどり着く。そこでハンカチを開くと、中から出てきたのは一片の木ぎれだった…。

 「一切れのパン」という物語。昔、中学校の教科書に載っていた。パン(木片)は希望の象徴。人間はどんな絶望的な状況でも、わずかな希望があれば明日の岸にたどり着けるのだという教訓が込められている。今、この国に必要なのは、まさにこの「パン」ではないか。

 菅内閣が発足した。コロナ関連の倒産が500件、解雇や雇い止めが5万人に達するような国難の中での船出だ。厳しい状況下で生きる国民にとって国のトップの理念ともいうべきメッセージは「希望のパン」となりうる。しかし、それは「まずは自助をしっかりと」といったものではないはずだ。

 そうではなく「今は大変だが絶対よくなる」といった、国民が「明日も頑張って生きよう」と思えるような発信だろう。むろん、こちらは「中身は木片」では困る。そうならぬよう、メッセージを具現化する各施策に尽力する覚悟が前提なのは言うまでもない。

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