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自民総裁選

2020年9月15日
 昭和の世代なら一度は耳にしたことがある言葉だろう。「今太閤(いまたいこう)」。当時、連続在職日数が最長だった佐藤栄作首相の次の田中角栄首相のあだ名だ。高等小学校卒業で首相にまで上り詰めたことに由来する。

 この学歴は当時、国民から好感を持って受け止められていた。「こういう人ならば、庶民に寄り添う政治をしてくれるのではないか」という期待感だ。毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい田中首相だが、実際に庶民の気持ちに通じていた部分があったことは、語録などから分かる。

 菅義偉官房長官がきのう、次の首相となる自民党総裁に選ばれた。先日テレビで「雪深い秋田の農家に生まれ、地元で高校まで卒業しました」と言っているのを聞いて、ややこじつけだが田中首相と重なった。雪国出身、史上最長政権の後の総裁、そして「たたき上げ」。

 2人は「官僚の統制」という点でも一見似てはいるが、実相は異なる。田中首相が官僚の人心掌握に長(た)けていたのに対し、菅総裁は安倍政権の要として内閣人事局設置に関わり、省庁幹部の人事を握ることで官僚を支配してきた。その強権は、一方で「忖度(そんたく)」の言葉に象徴される弊害をもたらした。

 安倍政権の継承を打ち出す菅総裁だが「功」の部分はいいとして、こうした「負の遺産」をどう是正していくか手腕が問われている。そして、昭和の昔に国民がたたき上げの首相に寄せた「庶民に寄り添う政治」への期待にどうこたえていくか、注視したい。

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