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プラスチックスープ

2020年6月30日
 涙を流しスープを飲む人魚。下半身はぼろぼろに砕けている―。悲愴(ひそう)感漂うイラストが表紙に載った本を手にした。米国人チャールズ・モア、カッサンドラ・フィリップスさんの「プラスチックスープの海」。

 調査航海による海洋環境調査に基づいて、想像を絶する量のプラスチックごみが海洋に投棄されている実態を告発する。海鳥や魚の胃から発見されたボトルキャップやレジ袋、魚網が絡まるアザラシなどの写真を見ると、表題の例えが危機感を持って迫ってくる。

 動物だけが被る災禍ではない。溶け出したプラスチックの成分は食物連鎖の中に入り込み、人間の健康にも脅威となっている。「再利用すればいい」と簡単に考えてしまいがちだが、種類が多いプラスチックのリサイクル率は利用率に追いついていない現状も解説している。

 まずは利用を減らすこと。地球の環境を考えたとき脱プラスチックは必須の課題であり、明日からスタートのレジ袋有料化もプラごみを減らす狙いだ。もともとレジ袋はコストに含まれており、価格に反映されているわけだから「袋が減った分、価格が安くなるかも」と消費者としては期待しよう。

 もちろん価格の問題より環境のために何ができるか考えるのが趣旨だ。買い物かごに野菜を入れていた昔に戻る、と思えば難しくはない。過渡期の混乱は消費者にも小売店にもあると考えるが、体をむしばむスープを子孫に飲ませない目的は忘れずにいたい。

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