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汗と涙のユニフォーム

2020年5月23日
 有名な漫画「巨人の星」で星飛雄馬が夏の甲子園に出場したくだり。父・一徹はそば屋のテレビで6時間観戦。店主に嫌がられたところで自宅にテレビが届いたと聞き、今度は帰宅して大音量で観戦を始めた。

 怒った近所の住民が集まって画面を見ると、飛雄馬が映っている。「長屋の自慢だ」とみんなで応援を始め、日ごろは鬼のように厳しい一徹もうれしそう。フィクションだが、昔から甲子園出場が選手の名誉だけでなく学校、地域の大きな誇りだったことが分かる。

 新型コロナウイルスの影響で、全国高校野球選手権大会と地方大会の中止が決まった。全国の茶の間を沸かす催しの中止は寂しい限りだ。甲子園を目指して一生懸命練習してきた選手の無念さはいかばかりだろう。本県では代替大会も検討されており、実現を願っている。

 歌人・俵万智さんのエッセー集「りんごの涙」に「努力できるということも実力のうち」という言葉がある。努力をしても限界があって実力は別、と思っていたが「努力の中から、実力も生まれてくる」と気付いたという。球児たちも努力をした分、築いた人間力は今後の人生に大いに役立つはずだ。

 俵さんが高校教師を辞め、専門歌人への道を決意した頃の本。悩みつつも自ら選んだ道を悔やまない、という意思が心強い。表題作はリンゴの花に染まったハンカチへの感動をつづる。球児たちの汗と涙に染まったユニホーム。それだけでも何よりの宝物だ。

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