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想定外という言葉

2020年5月21日
 脚本家の倉本聰さんが怒っていた。2011年6月に北海道で倉本さん主宰の劇団を取材したときのことだ。東日本大震災から3カ月。当時、震災のニュースでよく「想定外の」という言葉が使われていた。

 倉本さんいわく「想定外っていう言葉は、科学者の空想力のなさを暴露している気がするんですよ」。倉本さんは、東北が見舞われた原発事故にとても心を痛めていた。あのとき空想力が欠如していたのは科学者だけでなく、国全体がそうだったのかもしれない。

 コロナ禍の中で間もなく梅雨が来る。16日には、えびの市で降り始めからの総雨量が300ミリを超え、高千穂町などで土砂崩れがあった。風水害ではないが、宮城県では18、19日と連続して震度4の地震があり、長野県中部を震源とする地震も頻発するなど油断できない。

 「天災は忘れたころにくる」は物理学者・寺田寅彦の名言だが、天災かどうかは別にして、忘れたころどころか今は災害のまっただ中である。寺田はまた、こうも書き残している。「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい」。

 「3密」回避など感染拡大を防ぎつつ、どう災害に対応するか、多くの課題が突きつけられている。「正当におそれる」のと並行して、どんな事態が起きても「想定していた」と言えるくらいにここは「十分な空想力」をもって行政も個人も準備を進めたい。

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