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ピークをどこに

2020年5月20日
 どこの小中学校でも運動会・体育大会の前に予行練習がある。本番と同じように競技して児童・生徒は一喜一憂するが、本番では違った成績・順位になることも。実力のピークがずれるのはよくあることだ。

 一流選手は本番に焦点を定めて、最高の能力を発揮するために時間をかけて調整。勘だけでなく、経験豊富なトレーナーの意見が参考となる。4年に1度のチャンスとなると、その難しさは想像を絶する。東京五輪の1年延期はそういう困難な事態を招いている。

 思い出すのが「日本が世界に誇る最強マラソンランナー」として1980年のモスクワ五輪で金メダルを有望視された瀬古利彦選手だ。24歳という全盛期。五輪ボイコットで”幻”に終わったため、悲願の達成は4年後に持ち越されたが、調整に悩み、歯車が狂っていった。

 その経緯は門田隆将著「あの一瞬」の第一章「ピークをどこに」に詳しい。指導者の精神論もあって、家族にも会わず、連日の猛練習。慢性疲労がたまる一方だったが「休みたい、とは言えなかった」と同選手は振り返る。重圧に苦しみ違和感を抱えたまま走ったロサンゼルス五輪は14位に終わる。

 瀬古選手も指導者もピークの理論は理解していたが「本来の意味を見失っていた」と同書。東京五輪ではどの競技も戦略の練り直しは必至だ。代表選手の選考、モチベーションの維持など難題は多いが、あまり外部から口を出さない方がいいのは確かなようだ。

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