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ミネルヴァのフクロウ

2020年4月4日
 少し前の話になるが、福岡市の中心市街地でフクロウがいる店の前を通りかかった。ガラス越しに見た店内で羽を広げるフクロウの姿に、昔聴いた経済に関する講演会で講師が紹介した言葉がよみがえった。

 「ミネルヴァのフクロウは夜明け前に飛び立つ」―。ミネルヴァは、ローマ神話に出てくる知恵をつかさどる神。その女神が従えるフクロウもまた知恵の象徴だ。講師いわく「夜明け前の一番闇が深い時にこそ、知恵は出てくる」。いい話なのだが、実は間違い。

 正しくは「ミネルヴァのフクロウは迫り来る黄昏(たそがれ)に飛び立つ」。ドイツの哲学者ヘーゲルの言葉だ。その意味はとても哲学的で、ここの行数ではとても収まり切らないようなものだ。しかし、今はこの「闇の中で出てくる知恵」という解釈をあえて支持したい心境である。

 歯止めがかからない新型コロナウイルスの感染拡大。今が「夜明け前の一番暗い時」ならいいのだが、先は全く見えない。国も感染拡大防止、経済対策にと対応に追われているが、影響が多岐にわたりすぎて、状況悪化のスピードについていけないのが現実だろう。しかしそうは言っていられない。

 眼球を動かせないフクロウは首を270度回すことができるという。「知恵のフクロウ」は270度。だが、それでは足りない。国には上下左右360度の目配りをもって、きめ細かな対応へ知恵を絞ってほしい。救済策からこぼれ落ちる人が出ないように。

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