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不名誉な病名

2020年3月22日
 一昔前は子供が出掛ける時、親から「蚊に刺されると日本脳炎になるよ」とよく注意された。ノーエンの漢字は分からないが、たぶん日本だけの病気と思っていた。ワクチンの普及などで今は症例は少ない。

 だが有効な治療法は確立されておらず、今も危険な感染症だ。「日本大百科全書」によると「日本以外にも分布し」としてアジアの国々での流行が記されている。明治時代に、アジアでは最も医療が進んでいた日本での臨床事例が報告されたため付いた病名らしい。

 似た例に1910年代末期、世界的に大流行し、死者が1億人を超えたといわれるスペイン風邪がある。スペインは流行源ではないが、最初の感染情報が出たために付いた。世界的大流行となった新型コロナウイルスについても、呼称を巡る政府間の激論が勃発している。

 米国のトランプ大統領らがウイルスに武漢や中国を付けて呼んだことに、中国が猛反発。「ウイルスは米軍が持ち込んだ」と主張する。ちなみに世界保健機関(WHO)は、2月11日に新型コロナウイルスによる肺炎を「COVID(コビッド)19」と正式に名付けているが浸透度はいまひとつだ。

 ウイルスや病気に土地や人の名を付けるのは差別や風評被害を助長する、というWHOの懸念がある。確かに日本内でも、地名の付いた病名については改名を求める議論がある。何より世界を蹂躙(じゅうりん)する共通の敵に対して呼称問題で足並みを乱してはならない。

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