ホーム くろしお

ノムさんの足跡

2020年2月14日
 接点といえないほどの邂逅(かいこう)だが、プロ野球の名将ノムさんに間近で会ったことがある。亡くなった野村克也さん。監督だったヤクルトの1軍が西都市で春季キャンプを行っていたころ西都支局にいたためだ。

 歓迎会などでテーブルが一緒に。3回の日本一を果たすなど絶頂期にあったが、ジャージー姿の野村さんは野球以外は考えていない風情で、話し掛けるのがためらわれた。でも不快さは全くなく、あいさつに立つと、しっかり地元への礼を述べて立派な紳士だった。

 少年時代は家が貧しく、一流選手になれたのは「コンプレックスから人一倍練習したから」と語っていた。監督としての野村さんは徹底的にデータを駆使するID野球の提唱者として有名だが、基本は上を目指してがんばる選手の能力を引き出すなど育成に定評があった。

 著書の「プロ野球怪物伝」を読むと、才能におぼれ努力を怠った選手は認めていないことがよく分かる。所属リーグは違ったがライバル視した巨人のON(王貞治と長嶋茂雄)について紙幅を費やすのは、華々しい実績の裏にだれよりも厳しい練習を自らに課していた2人への敬意があったからだ。

 また有名だったのが、キャッチャーだった野村さんの「ささやき」。「最近銀座行ってる?」などとバッターにささやく。「動揺させるためによく使った」とは本人の弁。すべて勝つための戦術だ。偉大な野球人が本県にも残した足跡をいとおしく思い出す。

このほかの記事

過去の記事(月別)