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【先駆者たち・持続可能なくらしへ】-5-「温かなつながり」魅力

2020年11月21日
農山村の文化を再評価する宮崎大准教授 井上果子さん(宮崎市)

 山は所々紅葉し棚田に春菊など冬野菜が育っている。今月初旬、宮崎大地域資源創成学部准教授の井上果子(かこ)さん(46)は日之影町の中川集落にいた。農家民泊を営む瀧川宗利さん(72)宅に時折滞在し研究にいそしむ。ここからオンラインで授業や会議をすることも。「こないだは学生さんを連れて来(こ)らしたよ」と瀧川さんが教えてくれた。

 高千穂郷・椎葉山地域を中心に神楽の継承の在り方を研究している。足しげく通ううち、「農山村の人々は自然に感謝しながら、共同作業や文化の継承に力を合わせ暮らしている」と実感。「環境保全や人間らしい幸せを重視する『持続可能な開発目標(SDGs)』ができる前から、農山村は本質的に取り組んできたといえる」と話す。

 ▼恩恵を次世代にも 

 国際協力銀行勤務などを経て、東京大大学院で農業環境学研究室に所属しながらベトナムでコメの有機栽培を支援するなど実務や研究を重ね、2015年から宮崎大に。専門は農村計画学や国際協力で、持続的な地域発展についての授業でSDGsを取り上げている。

 文化に関心を持ったのは四国遍路がきっかけ。地元のもてなしや文化に触れ、「私は恩恵を受けたけれど、農山村に住む人が少なくなれば後の世代は経験できないかもしれない」と危機感を覚えた。

 本県で神楽に注目すると、帰省者や移住者らの参加を得たり、多くが子ども神楽を取り入れたりするなど持続可能にする工夫が各所でみられた。「神楽は地域で子どもを育て、集落を出た人が帰還できる場としても役割を果たしている。毎年来る客もいる。『帰りたい』『また来たい』と思わせる温かなつながりがある」

 文化継承を実現させている温かなつながりは都会で失われつつあるものだ。井上さんは現代的意義を見いだしシンポジウムなどで発信している。

 ▼感謝がよい選択促す

 SDGs達成へ行動を促す鍵になるのも温かなつながりだと語る。例えば都市部の人が農山村と関わる機会があれば、食を生み出す人々の思いを理解し、水や生態系など地域資源を大切にしようと考えるかもしれない。

 「よく知る人から教えてもらうことが大事。社会が複雑化し互いの存在が見えにくくなった今、自分の暮らしが多くの人に支えられていると感謝すれば、自然にも人のためにもよい選択をしようと思えるはずだ」と話している。 

【写真】宿泊先の瀧川宗利さんと談笑する井上果子さん(右)。日常会話で棚田や水路など集落の歴史も学んでいる=日之影町七折

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