歌人の俵万智さんが審査員を務める「第8回みやにち 俵万智短歌賞」で、最高賞に当たる「俵万智賞」を受賞した。短歌歴4年。「まさか受賞できるなんて。なぜ選ばれたのか聞きたいくらい」と驚きを隠せない。
新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増えた2020年、何げなく開いた新聞の文芸欄に目がとまった。「字を書かないと脳が衰えるよ」という友の言葉を思い出し、最初は川柳に挑戦。すぐに独学で短歌も始め、同年の同賞で佳作に選ばれた。
以降、短歌に絞り、週3首を目標に創作。受賞作〈ゆるやかにクラスの和にいる君は今バッタを追うても列に戻りて〉は自身が支援員として勤める、小学校での様子を詠んだ。
夏休み明けの9月、運動会の練習中にバッタを追って、列から外れた低学年の児童がいた。温かい目で見守る同級生や先生、時間がかかっても列に戻ることができた児童。その成長に心を打たれ、歌にしようと決めた。
クラスの「輪」ではなく「和」にしたのは、そんな和やかさを表現したかったから。「ギスギス、せかせかすることのない優しい時間がそこにあった」
創作するのは片道15分の通勤時間や入浴中など1人で過ごす時。「忙しくて歌を作るだけの時間を設けることができなくて」と?を赤らめる。
それでも受賞作は1カ月かけて推敲(すいこう)した作品。「子どもたちとは朝からずっと一緒に過ごしている。どうしても、かわいいあの子たちを歌にしたかった」
新富町で、夫や長女夫婦らと6人暮らし。63歳。