「大切なのは心。演奏技術は修業で上達するけれど、人間性はそうはいかない。母のように人とのご縁を大切にしたい」
二代目を30年間務め、肺がんで闘病中の母由哲(よしのり)さん(57)から受け継ぎ、27歳で宮崎市の津軽三味線演奏グループ「村上三絃道」の三代目家元に。25日、継承前最後の公演となった舞台に母娘で並び立つと聴衆から万雷の拍手が送られた。
2歳の頃から手ほどきを受け、宮崎学園短期大(宮崎市清武町)卒業を機に母と同じ道を歩むことを決心。22歳で県内外の師範たちを指南する総師範に任命された。「人前で三味線を弾き、歌うのは生活の一部」と話す。
家元襲名に伴い、西日本に400人超の弟子を持つグループを率いる立場となった。
「いかに人々に喜んでもらえる舞台をつくり上げるか責任を感じるようになった」と語ると同時に、「日本の伝統音楽を途絶えさせないため、多くの人に演奏を聴いてもらいたい」。りんとした表情に決意をにじませる。
「彼女にしかできない表現力がある」と由哲さんが認める演奏や歌は、向上心のたまもの。「(初代家元で故人の)祖父と母のような音を出したくて、今も2人のフレーズをまねしている」と笑う。
九州と四国、中国地方にある支部の指導や公演の傍ら、全国の小中高校でコンサートを開催。オリジナル曲の創作も手掛けるなど活動は幅広い。「都会だけでなく宮崎でも音楽のプロとして活動できる姿を見てほしい」と、夢を追う本県の若者にもエールを送る。宮崎市在住。