ホーム 特集

司法のひずみ 県内弁護士の現状

(上)裁判員裁判

2013年3月18日
■負担増大漂う疲弊感

 「国民に身近で、速くて、頼りがいのある司法」を目指す司法制度改革。同改革推進法が2001年11月に成立してから11年が過ぎた。裁判員裁判制度の開始や法曹人口の増加など、司法環境は大きく変貌。その一方で弁護士らの負担は増大し、疲弊感さえ漂う。改革と司法現場との間に生じたひずみは、県内にも影を落としている。(報道部・吉田聡史)

 初めての裁判員裁判を間近に控えた県内の男性若手弁護士は眠気を覚ますために、何度も顔を洗った。どう説明すれば「起訴内容を一部否認」という複雑な裁判を、法律家ではない一般市民に理解してもらえるか。連日、深夜まで及ぶ資料作りに追われ、気持ちは焦る。窓に目をやると空は白みがかっていた。

 司法制度改革の目玉、裁判員裁判制度が始まりもうすぐ4年。当初の心配をよそに、裁判員経験者からは「分かりやすい」「司法に興味をもった」など制度を高く評価する意見が多い。その背景には、専門用語が飛び交っていた従来の法廷を一変させた法曹3者(弁護士、検察、裁判官)の並々ならぬ苦労があった。

 男性弁護士が担当した事件は、逮捕、起訴から裁判までの期間は数カ月。法曹3者らで行う公判前整理手続きなどの打ち合わせは10回を超え、そのたびに主張の整理や膨大な資料作成に追われた。

 何度も被告に会った。やりがいはあった。ただ、「裁判員裁判以外の仕事に手をつける余裕もなく、事務所の他の弁護士に迷惑が掛かった」と打ち明けた。

■     ■

 宮崎日日新聞社が2、3月に県内の弁護士に対して行った司法制度改革に関するアンケートでは、「積極的に裁判員裁判をやりたいか」の問いに75%が「いいえ」「どちらでもない」と回答。「準備が異常に大変」「長時間拘束される」などの理由が多く、負担の重さが浮き彫りになった。

 負担は弁護士だけではない。宮崎地裁によると2012年末現在、裁判員裁判の対象となった被告人は40人。うち裁判が執行されたのは31人で、裁判待ちの被告は09、10年が4人、11年が7人、12年が9人と増加傾向にあるという(いずれも概数)。ある弁護士は「準備が大変すぎて、地裁も裁判員裁判を処理できていない。裁判官は忙殺されている」。法曹界に疲弊感が漂っていることを指摘した。

 宮崎産業経営大法学部の青木誠弘講師(憲法)は「裁判を分かりやすくする工夫は時間がかかり、消化スピードの向上は難しい。制度開始にあたり、国のコスト計算が甘かった。このままでは、制度が破綻する」と懸念。

 司法制度改革では、法曹人口の増加に取り組むが、「人を増やせば単純に負担が減るわけではない。逆に、弁護士の裁判員裁判離れが加速する可能性がある」と話す弁護士も。その理由の一つは、業界の苦しい台所事情という。

【写真】裁判員裁判制度開始や法曹人口増加など司法制度改革の渦中にいる県内の弁護士。改革に伴う司法現場の負担は重い=宮崎地裁

(上)裁判員裁判2013年3月18日付
(中)法曹人口激増2013年3月19日付
(下)過疎地解消2013年3月20日付

関連記事

powered by weblio


ロード中 関連記事を取得中...