ホーム 特集

老境の死角 みやざき成年後見制度

(1)財産管理

2013年2月20日
■介護現場では限界/行政、財政負担重荷に

 長寿社会を支える両輪として2000年4月、介護保険とともに導入された成年後見制度にひずみが生じている。この間、超高齢社会は加速した上、国内はしばしば経済不況に翻弄(ほんろう)された。社会状況の変化とともに、認知症高齢者などの生活や財産を守るべきはずの親族後見人が搾取に走る事態が多発。現実と制度のはざまであえぐ本県関係者の実態を報告する。(報道部・井口健二)

 宮崎市のある介護施設で、職員による入居者の預金の不正流用が発覚した。職員は入居していた80代女性の口座から現金約140万円を引き出し、ヤミ金融への返済に充てていた。

 この女性は2012年2月に入所。認知症を患い、夫が直前に亡くなった精神的ショックで不安定な状態だった。県外在住の妹がいたが、親しい親類が近くにおらず金銭管理ができる者がいなかった。

 成年後見制度は判断能力が十分でない高齢者らの財産管理や契約などを代理、支援するもの。施設は市に対し、制度に基づいて市長申し立てによる家裁の後見人選任を求めた。身寄りのいない認知症高齢者らを支援する制度で、弁護士ら専門家が後見人になれば財産管理を安心して任せられるからだ。

 しかし、市担当者は申し立ての基準を満たさないとして拒否。女性の認知症が基準の中程度より軽いうえ、「財産が何千万円もあれば管理する必要はあるが、(後見人への)報酬で預金もなくなり生活保護になる。いくら税金が飛んでいくか」と主張した。

 結局、問題をうやむやにしたまま、施設側は「日用品の買い物もあるからお願い」と安易に職員に口座を預けてしまった。その後から流用が始まる。職員はヤミ金融から借りた3万円の利息だけで数十万円の返済を強いられ、家族に相談できず預金に手を出した。最終的に口座の残金が底を突き、女性の入居費が支払えずに同9月に発覚。被害を全額弁済し退職した。

   ◆     ◆

 この問題で、施設は金銭管理を複数人でチェックするなど不正防止に向けて改善策を進めているが、別の施設職員は「身寄りのない高齢者が多く、忙殺される介護現場でどこまで徹底できるか限界がある」と問題を投げかける。

 一方、市は厳格な基準を盾にせざるを得ない部分もある。今回のケースにかかわらず、本人に金銭的な負担能力がなければ、市長申し立てによる手続き費用だけでなく後見人への報酬も市が賄うことになる。間口を広げれば認知症高齢者の増加によって財政はさらに負担を強いられる。

 この現状に対しある介護関係者は「生活に困窮しながら地域で孤立している認知症の高齢者も多い。この(厳格な)対応では福祉につながる機会を失いかねない」と不安を隠さない。制度が既に機能不全となりつつある現状が垣間見える。

【写真】認知症高齢者の財産を狙った搾取が横行。成年後見制度の機能不全が背景にある(写真の人物と本文は関係ありません)

(1)財産管理2013年2月20日付
(2)親族の搾取2013年2月21日付
(3)孤立化2013年2月22日付
(4)一体的支援2013年2月23日付
(5)再 起2013年2月24日付

関連記事

powered by weblio


ロード中 関連記事を取得中...