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新燃は今~噴火から2年

(上)静寂

2013年1月24日
■「忘れること怖い」/訓練、講習続け啓発

 「『新燃岳はどこですか』と尋ねるお客さんも、もういないですね」。火口から北西に6キロ。えびの市の「足湯の駅 えびの高原」の黒木九州男統括店長は静かな日々をかみしめる。灰一色に染まった韓国岳も、今は雪化粧をまとう。2012年7月には霧島連山の登山規制が一部解除され、一時2割まで激減した客足も8割まで回復した。表面上は日常を取り戻したが、その内実は「噴煙を眺めるだけ」だったあの頃とは違う。

 噴火後にえびの高原防災連携組織を結成。緊急時は環境省えびの自然保護官事務所が各施設の長に連絡し、観光客と従業員を屋内に避難させる態勢を整えた。

 黒木店長にも新たな日課ができた。えびの高原荘、えびのエコミュージアムセンターと当番制で毎朝9時、鹿児島地方気象台に電話で新燃岳上空の風向き、噴火や火山性地震の回数を尋ね、ファクスを回して互いに確認する。黒木店長は「今の山はどうなのか、私や従業員の意識付けにもなってます」と意義を語る。

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 11年9月7日の噴火を最後に小康状態が続く新燃岳。月4千回を超えた火山性地震も、12年5月以降は激減し、先月は25回だった。砂防ダムが増設され、新燃岳周辺の各家庭に戸別受信機が配布されるなどハード面での対策が着々と進む中、早くも「忘却が怖い」という声が挙がる。

 火口から南東に約8キロの都城市西岳地区。荒川内自治公民館長の野間登志子さん(56)は12年4月、知識を増やそうと防災士の資格を取得した。「噴火が始まった頃は空振に『建て付けが悪くなったごたる』、噴火も気づかんで『雪じゃろかい』て。知らんちゅうのは本当に怖い」

 西岳地区は土石流の危険性が高く、市は11年に7回もの避難勧告を出した。荒川内は40世帯77人のうち、70歳以上が60%以上を占めるため、市よりも早く野間さんが避難を決断する場合も想定される。

 住民には「もう大丈夫じゃね」という声もあるが、野間さんは新たな不安を抱く。「(新燃岳が)静かで、どんどん忘れることが怖いがよ」。週1回朝6時半、戸別受信機を通して事務連絡を流す際、必ず防災の備えを付け加えている。「皆さん、西岳地区では今年(13年)から1月26日は防災の日になりました」

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 西岳自治公民館連絡協議会は26日を「防災の日」に定め、自衛隊員を招いた講習会を予定する。25日は高原町の全小中学校が新燃岳を考える授業や訓練を、27日には西諸広域行政事務組合消防本部もえびの、小林市、高原町との初の合同訓練を予定する。

 「ハード整備が進んでいるが、東日本大震災でも構造物への過信が指摘された。この形の訓練は初めてなので戸惑いや失敗も多いだろうが、次(の噴火)のために本当に役立つ訓練が必要」と同本部警防指令課の野間和則課長。噴火への備えに加え、忘却との闘いが始まっている。

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 新燃岳の300年ぶりのマグマ噴火から26日で2年。関係者の今を伝える。

【写真】毎週1回、朝6時半からの放送で自然災害への注意も呼び掛ける野間さん。「何度も何度も声に出す。自分も忘れんごつね」=都城市高野町・荒川内自治公民館

(上)静 寂2013年1月24日付
(中)避難勧告2013年1月25日付
(下)共 生2013年1月26日付

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