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問われる電波被害 延岡携帯基地局訴訟

<上>主張

2012年10月11日
■住民「電磁波受け健康被害」 KDDI「科学的な裏付けない」

 「お父さん、耳鳴りがひどい」。2006年11月、延岡市大貫町の税理士岡田澄太さん(64)に妻洋子さん(59)が訴えた。その前月、岡田さんの自宅兼事務所から約40メートル離れた3階建てアパートの屋上で、大手通信会社KDDI(本社・東京)の携帯基地局運用が始まっていた。「基地局を撤去してほしい」。妻の言葉に澄太さんは当初「何をばかなことを」と、たしなめる。しかし、澄太さん自身も動悸(どうき)と不眠症に。転居すると症状は消えた。

 同じく体調の異変を示す住民が次々と現れ、「原因は基地局の電磁波」との見方を強めていく。KDDIや総務省九州総合通信局に撤去の要請を繰り返しても、「電磁波と体調に関係はない」との説明。09年12月、岡田さんら20世帯30人は、基地局の操業差し止めを求め宮崎地裁延岡支部への提訴に踏み切った。

 10年3月の第1回口頭弁論から結審(12年2月)まで公判は13回にわたる。住民の訴える『健康被害』が本当に電磁波によるものか―が最大の争点となった。住民側の根拠は「証言」だ。07年11月に延岡市が大貫町で実施した健康相談に、耳鳴りや肩こりなどの症状を訴える住民が60人に及んだ調査結果を提出。住民が「山中に“避難”すると耳鳴りが消える」と症状を伝え、電磁波に詳しい医師や学識者も「心因性ではない」「電磁波による愁訴の可能性が高い」などとした。

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 一方、KDDI側は科学的な裏付けを根拠に、一貫して「電磁波が原因ではない」と主張。住民側が訴える「電磁波が原因で症状を引き起こす電磁波症候群」について「世界保健機関(WHO)は症状と電磁波の因果関係を明確に否定している」と反論。加えて、「因果関係に言及している論文もあるが、致命的な欠陥などが指摘されている」と疑問視する。

 さらに、KDDI側は基地局が発している電磁波の強さは、国が定める「電波防護指針」の基準値を下回っていることも主張した。「基準値を下回る電波で健康に悪影響を及ぼす証拠はない」とする総務省の生体電磁環境研究推進委員会の報告を引用。国の制度上でも、同社には不備がないことを説明した。

 「科学的な裏付けがない」「現に住民は健康被害を訴えている」。双方の主張は平行線のまま。携帯電話市場での競争が激化する中、判断には全国からも注目が集まる。

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 延岡市大貫町の住民がKDDIに基地局の操業差し止めを求めた訴訟の判決が17日、宮崎地裁延岡支部で言い渡される。原告側によると、電磁波で健康被害が出たことを訴えて争う裁判は全国初。原告やKDDIの主張をたどりながら争点を整理する。

<上>主張2012年10月11日付
<中>因果関係2012年10月12日付
<下>判決の行方2012年10月13日付

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