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照葉輝く~綾ユネスコエコパーク

(上)生態系保全

2012年7月15日
■住民の協力欠かせず

 「生まれた時からそこにある森の価値が認められた」。綾町の上畑自治公民館長、小西俊一さん(57)は、同町を中心とする一帯が国連教育科学文化機関(ユネスコ)のユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録された喜びをかみしめる。

 1984(昭和59)年、奥山に照葉大吊橋が完成して観光地になったことで、国内最大級の照葉樹林を「すごい所」と実感。以来、大学の調査を手伝ったり、ユネスコ本部も含めた視察の案内をしたりしてきた。

 シイやカシに代表される照葉樹林はかつて西日本一帯に広く分布していた。しかし、生活圏の広がりや戦後の国による拡大造林で、森から種の多様性は奪われていった。

 綾の照葉樹林は、自然林の価値を訴えた前町長の郷田実さん(2000年に死去)が中心となり断固反対したことで伐採を免れた。高度経済成長の時代に、オンリーワンの輝きを磨いていった。「魅力をもっと広めていきたい」。小西さんは意気込む。

  ◇     ◇

 綾地域の取り組みは今後、ユネスコから世界に発信される。そのメリットは大きいが、調査保全活動の責任も強まると、町照葉樹林文化推進専門監の河野耕三さん(64)は気を引き締める。特に、生活と結び付きがあり独自の生態系を持つ里山について、未知の部分が多いという。

 河野さんは1月、町内で里山独自の豊かな生態系が広がる湿地を発見した。ぬかるみに足を取られながら、短時間でタニヘゴなど約10種類もの絶滅危惧種を確認。「本県初確認となる植物も2種類あった。もっと調査しなければ」との思いを強める。

 同町は4月に綾生物多様性協議会を設置。14年度までに保全のための計画を策定する予定だが、里山や中心街を含む町内全域で動植物を調査するには、マンパワーが必要となる。

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 日本自然保護協会によると、オーストリアでは、ブドウ畑に自生する希少種のランを、それぞれの農家が調査する活動に取り組む地域がある。賛同する農家はランを調査して個体数をデータ化。分布の状況が広範囲で分かるほか、生産するワインに付加価値を付けている。

 河野さんは、この取り組みについて「住民が調査と保護に参加し、さらにその成果が住民に還元されている」と評価。「綾町でも行政が行っている調査保護活動に、住民の積極的な参加が必要。その先に、真の自然との共生があるはずだ」と力を込める。

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 エコパーク登録の喜びに包まれる綾町。輝きを増す照葉をまちづくりにどう生かせばいいのか探った。(東諸支局長・成田和実)

【写真】1月に発見した湿地を調査する河野耕三さん。里山の調査と保全を訴える=7日午後3時40分、綾町

(上)生態系保全2012年7月15日付
(中)知の拠点2012年7月16日付
(下)波及効果2012年7月17日付

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