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DV救いはどこに~宮崎家裁個人情報漏えい

(上)目を疑う

2012年6月17日
■転居先が知られ恐怖

 宮崎家裁の裁判官が、夫のDV(ドメスティックバイオレンス)から避難し離婚手続き中だった女性の転居先を夫に漏らしていたことが発覚した。暴力によって心身ともに衰弱した被害者をさらに追い詰めるような裁判所の不祥事。DVが社会問題化する中で、女性を通してその深刻な実態を伝えるとともに、家裁の意識の希薄さを浮き彫りにする。(報道部・井口健二)

 出産2週間前の2010年12月末。夫は夜中に突然、「ハンバーガーが食べたい。ついてこい」と強要した。「給料日前だから控えめに」。そんな一言で夫は爆発した。「子供を殺してやる」。閉じ込められた車内、わが子が宿るおなかに太い足が襲ってきた。宮崎市の20代女性は、夫のDVに心も体もぼろぼろだった。

 7カ月前に結婚したばかり。交際中は仕事熱心で家事にも協力的だと思っていたが、同居して一変。食べたいものが食べられない、欲しいものが今すぐ手に入らない、そんなことで暴れだした。

 出産前に暴力がエスカレートし、11年の正月に県女性相談所の一時保護施設(シェルター)に入所。出産の不安、夫の暴力、子供の将来を考えると心が押しつぶされそうになる。涙が止まらなかった。離婚しようと決めた。

   ◆     ◆

 危険性を考えた女性相談所は「すぐ県外に避難を」と助言したが、県外に身寄りもなく所持金もない。夫のいるアパートしか行き場がなく、離婚までは夫の顔色を見ながら耐えるしかなかった。

 長女を無事出産したが、直後の2月に事件が起きた。夜泣きする長女のミルクを作り、携帯電話で遊んでいた夫に「あやしてほしい」と頼んだ。無視する夫に小言を言うと、「何様か」と腹と足に殴る蹴るの暴力。さらに、熱湯が入ったポットを長女の頭上で「うるせえ」と振り回した。110番通報し警察官が連行した隙に、DV被害者支援団体・ハートスペースMのシェルターに避難。別の場所に転居した。

 夫は暴行容疑で書類送検され、罰金刑を受けた。仕返しを恐れ、転居先が分からないように住民基本台帳の閲覧制限を申請。捜索願を受理しないよう警察に要請した。5月から離婚調停が始まり、生活費を振り込まない夫に生活費の分担請求調停を申し立て。宮崎家裁にはDV被害者であることを伝え、申し立て関連書類で転居先を夫に知らせないよう要請していた。

 しかし、生活費の審判決定文書が家裁から届いたとき目を疑った。転居先住所が書いてある。夫にも同様の文書が送られており、家裁の担当者は「現住所を書く決まり」と相手にもしない。「居場所が漏れた。明日からどうやって暮らせばいいのか」。恐怖に身がすくんだ。

宮崎家裁個人情報漏えい(上)目を疑う2012年6月17日付
宮崎家裁個人情報漏えい(下)甘い認識2012年6月18日付

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