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みやざきベビーハンズ物語

2018年6月11日

小さくて愛らしい花材 〝赤ちゃんの手〟


赤ちゃんの手のような形をしたベビーハンズの葉

赤ちゃんの手のような形をしたベビーハンズの葉

 愛らしい小ぶりの葉が〝赤ちゃんの手〟のように見えることから名付けられた観賞用の葉物花材「ベビーハンズ」。本県では2013年度から産地化に取り組み、現在は栽培面積が約7㌶まで拡大した。JAや県、生産者らは「日本一の産地」実現に向けて力を結集し、新たな歴史をつくろうと努力を続けている。

北海道ルーツ キイチゴ改良

 ベビーハンズのルーツは北海道。在来のカジイチゴ(バラ科キイチゴ属)の中から小さい葉を付ける変異体を選抜して改良を続け、06年に品種登録された。葉の大きさは8〜10㌢。黄緑色の葉のかわいらしい形状が人気を呼び、母の日や結婚式など慶事用の花材として人気だ。JA宮崎中央果樹花卉課の長谷川一也さんは「どんな花も引き立てることができ、花より高値を付けることもある」と自信を見せる。

日本一の産地を目指し、本県で栽培が始まったベビーハンズ

日本一の産地を目指し、本県で栽培が始まったベビーハンズ

市場調査ニーズをつかむ

 本県への導入は、徹底した市場調査から始まった。県総合農業試験場の中村広副部長(51)が09年、県農業経営支援課の専門技術指導担当として専門小売店を回っていた際、「ベビーハンズが年間を通してあるといい」という現場の意見を聞いたのがきっかけだった。当時は北海道産が7〜9月に出回るだけ。「宮崎の気象条件なら、春も秋も出荷できる。全国の潜在的なニーズは高い」。中村副部長は、種苗の専用利用権を持っていた総合商社の日貿(三重県)と交渉。同社が本県で農場経営をしていた縁もあり、栽培が決まった。

品質維持と安定供給が鍵

 ベビーハンズは露地栽培のため、生育は気象に左右される。さらに高温多湿の本県は主産地の北海道と気候が大きく違うため、前例のない病気が発生するなど悪戦苦闘。本県での栽培方法の確立は「ゼロからのスタート」(中村副部長)だった。

JA宮崎中央の職員とベビーハンズの出来を確認するJA花き協議会キイチゴ研究会の浜田会長(左)

JA宮崎中央の職員とベビーハンズの出来を確認するJA花き協議会キイチゴ研究会の浜田会長(左)

 宮崎県JA花き協議会キイチゴ研究会の浜田美彦会長(52)は「同じ露地栽培でも野菜と違い、花材は見た目が命」と説明する。害虫駆除や病気予防で肥料をやり過ぎると、葉が濃くなったり背丈が高くなったりして、本来のかわいらしさが失われてしまう。JAは、県農業改良普及センターや県総合農業試験場亜熱帯作物支場と協力して試験栽培を始め、生産者らと研修会を重ねて技術の確立に力を入れてきた。さらに、10㌢単位の県内統一基準を設け、品質の均一化にも努めている。

JA宮崎経済連営農振興課の長谷川哲司さん

JA宮崎経済連営農振興課の長谷川哲司さん

 本県の目標は栽培面積10㌶、300万本。「日本一」を目指す本県にとって、品質の維持と市場への安定供給は必須課題だ。北海道産が品薄になる時期に合わせて消費地に提供する「リレー出荷」の確立も不可欠となる。JA宮崎経済連営農振興課の長谷川哲司さんは「グリーン花材は常に量が必要。市場の信頼を得るためには安定出荷が欠かせない」と気を引き締める。

 生産量は、北海道の年間約100万本に対し、本県は約60万本で、浜田会長は「まだまだ発展途上で、歴史をつくるのはこれから」と意気込む。試行錯誤を続けながら作られる本県のベビーハンズ。JAや農家の期待を握りしめて生まれてきた〝手〟は今、愛情を受けてゆっくり開こうとしている。

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