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癒えない病 県内依存症の実態

【1】ギャンブル

2016年11月14日
治療後も欲求、衝動

 給料は10日ほどで底を突いた。消費者金融に手を出し、家族の財布から金を抜く。テレビなどを売り払い、どこかに金がないかと家中をあさった。「パチンコのために必死に金をかき集めていた」。県西部に住む幸一さん(30)=仮名=は振り返る。

多額の借金 自殺多く

 初めてパチンコ店に行ったのは21歳の時。兄に誘われたのがきっかけだった。たばこのにおいが充満し、会話もできないほど騒々しい店内。手持ちの数千円はあっという間に消えた。「うるさいし、お金ももったいない」。そう感じていたはずだった。

 その後も友人や兄に誘われ、「暇だから」と足を向けた。勝てば金が何倍にもなり、派手な効果音や演出に興奮する。人間関係がうまく築けずに抱えた悩みやストレスは吹き飛び、優越感も感じられた。いつの間にか、1人で毎日行くようになった。使う額は数千円から数万円に。当たりが出なければ、財布が空になるまでつぎ込み続けた。

□     ■

 「自分をコントロールできない」。徐々にそう感じ始めた。24歳で消費者金融に手を出した。「最初は怖かったが一度借りると次からは自分の貯金をおろしている感覚になった」。数万円ずつ借り続け、瞬く間に50万円に膨らんだ。

 明細が親に見つかり、パチンコでつくった借金と明かすと肩代わりしてくれた。罪悪感はあったがパチンコ通いはやめられず、給料を使い果たすとまた消費者金融へ。「勝てば返せる」。借金は100万円近くに達した。

 負けると店への怒りやいら立ちを抑えられなくなった。精神は不安定になり、同僚との会話も避けるように。消費者金融からの督促は無視し、現実から目を背けようと浴びるように酒を飲む。

 「行けば自分が苦しむだけ」。分かってはいるが、歯止めがきかない。「ギャンブルのことだけしか考えられなくなり、『誰か助けてくれ』と思うようになった」

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 厚労省の研究班が2014年に発表した推計では、ギャンブル依存に陥っている人は国内で536万人に上る。

 依存症の治療を手掛ける大悟病院(三股町)でも患者は後を絶たず、06年10月から現在まで240人以上が訪れた。内田恒久医師は「どっぷりとギャンブルにつかり、借金でにっちもさっちもいかない状況になってから受診に訪れる人がほとんど」と語る。

 ギャンブル依存について内田医師は「例えるなら、脳がウイルスに侵されたような状態」と表現し、「回復はしても、治癒は難しい」と指摘。多額の借金も抱え、「ほかの依存症に比べて自殺者が多いのも特徴」と強調する。

 幸一さんも親に促され、今年3月から4カ月半、同病院に入院した。だが、治療を終えた今も「欲求や衝動は常にある」という。「勝った時の優越感や興奮が頭から消えない。回復しているかどうかさえ分からない」と吐露する。

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 ギャンブルやアルコール、薬物…。県内で依存症を克服しようともがき続ける人々や治療の現場に焦点を当て、「癒えない病」の実態を追った。

【写真】病院の廊下を歩く幸一さん。退院後もギャンブルへの欲求と闘っている

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