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老いる受刑者 みやざき更生事情

(上)福祉施設化

2016年10月31日
介護や入院 職員負担

 宮崎市糸原の宮崎刑務所で60歳以上の受刑者の割合が年々増加している。今年7月現在、全受刑者数333人のうち60歳以上は22・5%に当たる75人。2007年の11%から倍増した。高齢化が「塀の中」へも押し寄せた格好だが、専門家は高齢者の再犯率の高さも一因と指摘。介護や入院の付き添いなど現場は「福祉施設」さながらの重い負担を強いられている。犯罪者を更生させ、円滑な社会復帰を促す刑務所の機能に影響が懸念されている。老いと矯正の実情を見詰めた。

60歳以上2割、窮状訴え

 午前8時、同刑務所の小さな運動広場では、白髪交じりの受刑者5人が背中を丸め、ゆっくりとした足取りで歩いていた。30分ほど設けられた運動の時間、一般の受刑者は広い運動場で走ったり球技をしたりする。高齢受刑者は転倒やけがの恐れがあるため、別メニューを設けた。運動というより散歩。疲れて日陰で休む人も目立つ。

 5人は60~80代。年齢や病気のため、通常の受刑生活を送れず、特別プログラム「養護処遇」を受けている。

 運動後に始まる刑務作業も別だ。通常は工場で木工や洋裁に従事するが、5人は共同居室に戻り、紙細工を行う。ひたすら紙を折り、袋を作るという単純作業だが、元田治久総務部長は「作業手順を覚えられない人や、不器用でできない人もいる」と明かす。

 受刑者の高齢化に伴い、職員の負担は増えている。体調管理や持病の薬剤管理に気を使うほか、中には介護が必要な人も。受刑者の刑務作業には炊事も含まれるが、近年は刻み食やミキサー食の用意を指示するようになった。作業の一環で、食事や入浴の介助、トイレの付き添いにも当たらせるが、「いつか刑務官の仕事に加わるだろう」と平山義文統括矯正処遇官は先行きを案じる。

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 高齢受刑者は急病で病院に運ばれたり、入院したりするケースも多い。その際は逃走防止のため、原則として複数の刑務官が24時間態勢で付き添う。平山統括矯正処遇官は「通常の業務にしわ寄せが来ている。何とか職員を回しており、“自転車操業”状態」と窮状を訴える。

 全国には4カ所、医療刑務所があるが、収容人員には限りがあり、手術や長期療養が必要な受刑者で手いっぱいとなっている。比較的症状の軽い高齢者は各刑務所で対応せざるを得ない。

 認知症への対応も喫緊の課題だ。約30年にわたり受刑者の診察に当たる男性医師(65)によると、宮崎刑務所でも認知症が疑われる受刑者が数人いるという。今年からは認知症予防のため、30分のビデオを週1回視聴させるなど、新たな取り組みを始めた。

 医師は自問自答する。「刑務所に入っていることさえ理解できていない人もいる。そんな人に必要なのは刑罰ではなく、福祉的な支援では」

【写真】運動の時間に一般受刑者とは別の小さな広場で、体を動かす高齢受刑者=宮崎市糸原・宮崎刑務所

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