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忍び寄る闇

【第3部・薬物依存支援の行方】(1)医療機関と連携不可欠

2016年3月31日
リハビリできる状態へ

 民間のリハビリ施設と医療機関の連携や、精神保健福祉センターでの治療プログラム、家族への教育や支援などさまざまな角度から薬物依存症者のサポートに取り組む東京都。第3部では東京都の取り組みから、依存症から回復するための環境が整っていない本県の、あるべき姿を探る。また、県内で始まる依存症者の支援体制を構築する動きや、新たな薬物乱用者を生まないための取り組みに迫る。

 窓の外を眺め「誰かに狙われている」、横切る人影を見て「そこに警察官がいる」。2012年。東京都荒川区の薬物依存症のリハビリ施設・東京ダルクで、覚せい剤の使用歴がある30代男性が突然、妄想や幻覚などの離脱症状に苦しみ始めた。

 「禁断症状は人それぞれ。自分と違うケースを目の当たりにすると、スタッフだけではどう対応すればいいか分からない」と同ダルクホームの幸田実施設長。そんな時の頼みの綱は、医療機関しかない。

 国内に59カ所ある「ダルク」の先駆けとして、1985(昭和60)年に設立された東京ダルクは、日常生活の場となる「ダルクホーム」と、ミーティングなどの訓練を行う「セカンドチャンス」からなる。およそ30人の入所、通所者は一日3回、計4時間のミーティングを月-土曜日まで毎日実施し、依存症からの回復を目指す。

 ただ幸田施設長は「離脱症状や精神疾患があると、活動の効果は薄れる」と説明。同ダルクでは開所時から複数の医師と連携し、リハビリに取り組んできた。「急な診察や入院を受け入れてくれる医療機関があることが、薬物依存から回復するための条件と言える」と力を込める。

 同ホームの入所者らを受け入れる雷門メンタルクリニック(台東区)の伊波真理雄院長は「依存からの回復のためには、医療機関が身体や精神のダメージを治療し、睡眠のリズムや食欲を回復させ、リハビリできる状態にすることが必要」と考える。

■    ■

 同クリニックでは薬物依存が疑われる新規の患者が来た際、ダルクや都の精神保健福祉センターのプログラムを受けるよう勧める。「プログラムに参加しない患者は、一回きりで診療にも来なくなる」からだ。伊波院長は「困った時に頼れる保健室のような存在でいい。ダルクと病院がつながることでリハビリの効果は上がる」と語る。

 翻って本県。宮崎ダルク(宮崎市西池町)の戸山実香施設長は「幻覚幻聴や妄想。何かあってもすぐに診察を受けられることは少なく、入院させてもらえるのはまれ。施設で面倒を見るケースが多い」と明かす。過去には状態が回復しないまま逃げ出してしまう入所者もいた。

 東京ダルクホームの幸田施設長は「回復を望む依存症者が必要な支援を受けられないことは悲しい」と本県の現状を懸念。「連携は信頼関係があって成り立つ。ダルクと病院、または医師。少しずつでも対話を重ね、信頼関係を築くことから始めてほしい」とアドバイスを送る。

 医療機関で適切な治療を受けた冒頭の男性はその後、地方のダルクでリハビリに専念。現在はダルクを退所し、薬物を断ちながら元気に働いているという。

【写真】ミーティングなどを通し、薬物依存からの回復を目指す東京ダルクの入所者ら。幸田施設長は「医療機関とつながることが回復の条件」と語る=東京都

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