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喧騒の陰で(1)高齢者施設

2015年1月26日
 アベノミクス継続の是非を問う衆院選に、4日告示の県知事選も重なった。師走の喧騒(けんそう)に包まれる県内の足元に目を転じれば、暮らしのほころびは都市との格差や制度の不備などによって広がり、繕い切れない政治に厳しい視線が向けられている。逼迫(ひっぱく)する現場を取材した。

職員待遇改善に限界

 県内の有料老人ホーム。入所する60代女性が昨年4月、息苦しくもだえていた。救急車は到着したが搬送先の病院が見つからない。約1時間後に運ばれ、間もなく息を引き取った。みとった介護職の40代女性は絶句し、施設に疑念の目を向けた。「指定病院もないのか」

 病院との連携がないまま、搬送遅れは今年にかけて10件近く続いた。しかも症状が悪化するまで救急車を呼ばない。女性は施設を追及したが、責任者は「(施設で)死んでも仕方ない」と言い切った。入院になれば介護報酬を請求できず、収入を途絶えさせたくない施設の思惑があった。

 “介護漬け”の実態も。体調を崩した入所者を同じ系列のデイサービスに週6日通わせた。その場に座りっぱなしでぐったりと疲れ果て、生気を失っている。どう生きるか意思を奪われ、介護報酬を獲得する道具として扱われる現実。施設でごみのように捨てられた神棚も見た。病院に通えず亡くなった80代男性が大切にしていたものだ。「これが末路なのか」。女性は耐えきれず、この施設を辞めた。

 県内の有料老人ホームは過去5年間で4倍の約300施設に急増。県の許認可が必要な特養ホームとは異なり、届け出によって開設できるたやすさに加え、改正老人福祉法で2006年から「定員10人以上」の開設条件が撤廃。異業種参入の呼び水となった。

 しかし、介護ビジネスを狙った粗悪な施設も横行。監査権がある県は目を光らせるものの「制度を熟知していない施設への説明に多くの労力と時間を監査で費やし、悪質施設の指導に特化できない」と苦慮。入所者の処遇改善につなげる本来の目的と乖離(かいり)している現場がある。

 過酷な介護現場の人手不足が介護の質を低下させている面もある。国は介護報酬に上乗せする形で介護職の人件費アップなど待遇改善を対策に掲げているが、財源となるはずの消費増税10%引き上げ先送りで不透明な状態だ。

 宮崎市加江田の有料老人ホームあおしま優亜館の黒木正弘施設長は「慢性的なマンパワー不足に、職員給与を手厚くして人材を確保しているが大幅な赤字だ。まじめにやっている施設が報われる制度設計になっていない。自助努力では限界がくる」と訴える。
(随時掲載)

【写真】介護を受ける有料老人ホームの入所者。粗悪な施設から高齢者を守るための行政のチェック機能強化が求められている

 識者に聞く 

第三者機関と行政連携必要
【宮崎産業経営大法学部・廣田久美子准教授(社会保障法)】
 有料老人ホームは経済的に困窮し、行き場のない高齢者の貴重な受け皿になっている半面、処遇や契約上のトラブルが目立つ。行政の監査機能を強化するため、県外で例がある第三者評価機関と分担することも必要。利用者の施設選びの参考となる情報提供も高齢者に寄り添えるような在り方を模索してほしい。

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