ホーム 特集

山動く

岐路に立つ県産材(上)輸出

2015年1月26日
 山が動く-。戦後の拡大造林が県内で始まり60年。十分すぎるほど成長した森は、次の世代に更新する「主伐」と呼ばれる伐採によって切り出され、その広さ、丸太量ともに平成に入って最多となった。長らく逆風にさらされてきた本県林業界に、丸太の海外輸出の急増、バイオマス発電施設の相次ぐ稼働による新たな需要増が光明を投じている半面、それに追いつかない苗木不足が影を落としている。夜明け前の岐路に立つ林業県の現場を取材した。(報道部・井口健二)

中国からの注文急増

 中国からの電話が鳴りやまない。「取引したい」「1カ月で5千立方メートル欲しい」。丸太を輸出している南那珂森林組合(串間市)には、商社から驚くような注文が舞い込んでくる。国内の製材業者が敬遠する大木も香港商社からの依頼で3月、11月に各1千立方メートルを調達した。現地で内装材や家具などに加工される。

 都城、鹿児島県・曽於地区森林組合の2者とつくる輸出協議会の実績は2013年度が中国向けの伸びで前年度比4倍近くの2万3910立方メートル。14年度は3万立方メートル、2年後には5万立方メートルを見込む。中国へ輸出されるのは大半が曲がり材などの低質材だ。

 同組合木材流通促進室の清水賢次室長は「採算が合わず山に眠っていた材に商品としての光が当たっている。輸出が林業に大きな変化を与えている」と輸出戦略を練る。

 中国では建築基準法に当たる規範改定が今後予定され、従来制限されていた住宅建築構造材に日本の丸太を使用できる道筋ができる。消費増税後の国内の住宅建設が鈍る中、輸出は膨大な需要を掘り起こせる可能性を秘めている。


 本県は、輸出向け木材の国内最大の供給基地。貿易統計によると、細島港(日向市)と、「6~7割の県産丸太が流れている」とされる志布志港(鹿児島県)の輸出は、13年が過去最大の約14万4千立方メートルを記録し全国の半数を占めた。14年は10月現在ですでに19万立方メートルを超えている。

 一方、低質材を原料とした県内のバイオマス発電施設は2月から来年4月にかけて5カ所が相次いで稼働。日向市に進出した製材大手・中国木材(本社・広島県)も動きだした。商社関係者は「丸太不足で目標の半分しか確保できていない。宮崎では豊富な資源を狙った大手商社が丸太獲得競争にしのぎを削っている」と急激な動きを明かす。

 13年の伐採面積(主伐)は25年前の2・6倍、平成に入って最多の2230ヘクタールに。伐採期と需要増が重なり、大量の丸太が山から吐き出され、国内へ、アジアへと流れる。県森連市場の木材平均価格は過去最低だった12年度の1立方メートル当たり8300円から13年度は1万300円。14年度も月によっては1万2千円台に達し、回復の兆しが見えている。

 新たな局面を迎えた期待感とは裏腹に、長らく続いた低迷が林業構造の足腰をすっかり弱らせてしまっていた。それはまた、環境破壊など新たな危険性もはらんでいる。

【写真】急増する木材輸出の拠点となっている細島港=日向市

 円安で国産材利用増 

【鹿児島大・遠藤日雄教授(森林政策)の話】
 主伐を視野に入れた増産態勢に転じた感覚だ。円安で外国材輸入に割高感が生じ、国内工場が国産材を利用し始めたことが要因。さらに、宮崎、鹿児島、熊本、大分の4県で木質バイオマス発電稼働に合わせ燃料用丸太集荷が始まった。宮崎は中国木材の大規模製材工場が稼働、鹿児島で大手住宅メーカー向けに住宅部材を供給する会社が設立。ともに丸太集荷が始まり、主伐に拍車を掛けていると考えられる。

【岐路に立つ県産材】(上)輸出2014年12月29日付
【岐路に立つ県産材】(中)弊害2014年12月30日付
【岐路に立つ県産材】(下)守りたい故郷2014年12月31日付

関連記事

powered by weblio


ロード中 関連記事を取得中...