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食揺らぐ

第2部・変わる社会構造(1)縮小する産地

2015年4月13日
消費の減退止まらず

 冬場に乾いた季節風「鰐塚おろし」が吹く気候を生かし、昭和30年代以降、漬物原料の干し大根生産が盛んになった宮崎市田野町。最盛期には300基近い「大根だな」が組み上がる。それでもJA宮崎中央漬物大根部会の後藤裕司副会長(54)は「やぐらの数は随分減った。県民から冬の風物詩ともいわれるこの光景を、今後も維持できるだろうか」と案じる。

 農家数は1980(昭和55)年ごろに約600戸に達した後、高齢化の影響で激減。今年は4分の1の144戸まで縮小した。

 大根干しは重労働で朝掘った大根は昼のうちにやぐらに掛ける。雨が降ればシートをかぶせ、氷点下の夜はストーブをたく。後藤副会長は「目の回るような忙しさ。『きつい』とやめる高齢者が多い」と吐露する。

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 ユズが特産の西米良村では高齢化と、人口減少による担い手不足が産地を直撃する。ピークの98年には約100人が30ヘクタールで栽培していたが、急傾斜地の園地での作業となるため、高齢農家を中心に生産を断念。現在は66人の13ヘクタールにまで減少した。

 過去10年の新規就農者は3人にとどまり、あちこちに荒れたユズ園が目立つようになった。村内の加工会社では加工用原料が足りず、ここ数年は村外から数十トンを入荷する。村は5ヘクタールのユズ園を新たに造るなど生産量の確保に本腰を入れ始めた。村ゆず振興部会の上米良篤部会長(68)は「このままでは産地としての存続は困難。数少ない基幹作物の衰退は村の活力を失わせることになる」と危機感を持つ。

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 田野町の鰐塚おろしは今も昔も干し大根を味わい深いものにするが、「特に若い世代で漬物離れが深刻になっている」。町で操業するJA宮崎中央の漬物加工場責任者・瀬戸口正直販売部次長(52)はそう嘆く。

 食品需給研究センターによると、90年代に110万トン前後だった全国の漬物生産量は2013年に71万トンに急落した。食の西洋化によるコメ離れの加速で、漬物が食卓に上る回数が減ったことが要因だ。JA宮崎中央の漬物加工場が加工する干し大根も約30年前の3分の1以下の約千トンに落ち込んだ。

 同JA漬物大根部会の後藤副会長は「消費減退は確実で上向く傾向はない。これからも農家減少は避けられないだろう」と肩を落とす。

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 急速に進む高齢化や人口減少に加え、個のレベルでは世帯のありようや食生活が変化した国内。人々の暮らしと表裏一体で発展してきた国内農業、産地の根本が大きく揺らぎ、従来の生産態勢を保てなくなりつつある。時代や社会構造に合わせて生き残りを模索する県内の産地、担い手の現状に焦点を当てる。

【写真】やぐらに大根を掛ける農家。寒風の中で作業が続けられる=宮崎市田野町乙

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