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微罪の陰で みやざき累犯事情

(1)認知症

2014年4月11日
■頼る人なく孤立

主に微罪事件を裁く宮崎簡裁208法廷。多くの累犯者がここに立つ
 犯意を自覚しないまま万引など微罪を繰り返す高齢者や障害者たち。刑務所で懲役を求める刑罰の流れで、累犯によって長期収容され、更生できない累犯者と被害者を生む不幸の連鎖が続いている。安全、安心を求める社会の利益のためにも、彼らにどう向き合えばいいのか。累犯の現状と求められる支援を探る。

 法廷に立つのは何度目だろう。万引しようと思っていないのに気付けば手提げバッグに入れてしまう。そして、逮捕される。どうして…。2013年11月、主に微罪事件を扱う宮崎簡裁208法廷。裁判官が懲役1年2月の実刑判決を告げた。思わず叫んだ。「死にてぇよぉ。どうすることもできないですかー」。おえつが止まらなかった。

 被告女性(80)は過去10年で3回の窃盗罪により懲役刑になったとして前回は常習累犯窃盗罪で服役。刑務所出所し、4カ月後の13年7月、宮崎市のスーパーで栄養ドリンクなど12点(4千円相当)を万引したとして逮捕された。

 生活に困っていたわけではない。節約して食品メーカーで働いた給料、退職金をため、年金も受給。1千万円以上の資産があった。しかし、数年前から精神状態に変調をきたし、次第に万引を繰り返すようになった。

 「盗んだらどうなるか考えずに瞬間的に万引してしまう。自分でも説明できない。何でか…、腹が立つ」。公判で語る女性の動機は、はたから見れば理解に苦しむ点があった。医師からは心の病と診断され、弁護側は認知症の疑いもあるとして執行猶予で治療による更生を求めたが、裁判官は常習性の高さを指摘し、実刑判決とした。

■     ■


 認知症の高齢者が犯罪に走るケースは少なくない。本来ならば福祉の支援を受ける必要があるが、その網からこぼれ落ち、常習者として実刑を求めがちな司法の流れに乗り累犯の悪循環から抜け出せなくなる。

 その80代男性もそうだった。車上荒らしなどの窃盗を繰り返し、人生の半分に当たる40年を刑務所で暮らした。6年前に出所し、直後に宮崎市の量販店で衣類を万引したとして逮捕。その際、「(実在しない)息子が払いにくるから」と言い続けた。自らの年齢も日付も言えないほど認知機能が低下していた。

 出所後に受け入れ先の老人施設を探した県地域生活定着支援センターは「男性から兄弟も離れていき、頼る人も住むところもなく生活に困窮し、判断能力が落ちていって犯罪を繰り返していったようだ」と説明した。

 高齢者福祉に詳しい宮崎産業経営大法学部長の矢鋪渉教授(民法)は訴える。「家族や社会、福祉から手が差し伸べられないまま、孤立によって累犯者が生まれている。彼らの姿は薄っぺらい社会を反映したものかもしれない」

【メモ】
 微罪 国家公安委の犯罪捜査規範で微罪処分として定められ、被害が少額で再犯の恐れがない者の窃盗などの犯罪。訓戒だけで処理されることもあるが、再犯によって常習性が認められれば逮捕から起訴、公判では実刑判決、刑の長期化を招く可能性が高い。

【写真】主に微罪事件を裁く宮崎簡裁208法廷。多くの累犯者がここに立つ

(1)認知症2014年4月6日付
(2)高齢・障害2014年4月7日付
(3)懲役の現実2014年4月8日付
(4)相談員2014年4月9日付
(5)社会の目2014年4月10日付
(6)共生2014年4月11日付

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