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だれも知らない みやざき子どもの貧困

【第10部・展望】(1) 学び

2014年11月25日
■授業通し深刻さ理解

【第10部・展望】(1) 学び
 「(記事中の)貧困の男性を苦しめている背景は何だろう」「どうしたら貧困から抜け出せるだろう」。都城市の小松原中(村橋茂校長、271人)の3年生の授業。佐土瀬英嗣教諭(32)は、本紙連載「だれも知らない~みやざき子どもの貧困」の記事を使い、6月から授業をしている。

 10月下旬の授業では、非正規の仕事を掛け持ちして子育てする男性を取り上げ、解決策を考えた。「(就職率のいい)県外に出たらいい」「裁判を起こす」「人材不足の医療・福祉職に就職すればいい」。答えが簡単に出ない問いに生徒たちは真剣に挑む。

 佐土瀬教諭が担当しているのは、基本的人権や政治・経済について学ぶ「公民」。経済のグローバル化や規制緩和による地方経済の衰退、非正規雇用の拡大、全国最下位レベルの本県の所得と賃金など、貧困を生み出す背景を織り交ぜ、その影響が子どもたちの生活に及んでいることを説明してきた。

 当初、自分には無関係だと思っていたり、深刻さを理解できなかったりした生徒たちに、徐々に変化が現れてきたという。「大人になって選挙に行くか」と問うと、ほとんど手が上がらなかったが、授業を終えて約9割が「行く」と答えるようになった。

 「私たちの生活は社会や制度と密接につながっている。良い社会にするために諦めないで。皆の力で社会を変えることができる」。繰り返し伝えてきたことが少しずつ生徒たちに浸透してきたのかもしれない、と佐土瀬教諭はわずかな手応えを感じる。

 最近、生徒たちは感想を書いた。「非正規雇用は企業には都合がいいかもしれないが、働き手には厳しい」「病気や事故で働けなくなり、誰でも正社員の仕事を失う可能性がある」。そこには、貧困層の人たちに共感する声が目立っていた。

 一方で、貧困問題を授業で扱う難しさもある。「ほとんどの学校で、経済的に苦しい子どもが教室に必ずいる。当事者を前に、真正面から貧困を取り上げるのをためらう教員は多い」と県人権・同和教育研究協議会の事務局、外山俊行教諭(53)=綾中。「学力や意欲の低下など、貧困の根深さが学校に浸透しておらず、教員の意識の変化も求められる」と強調する。

 佐土瀬教諭は「子どもの貧困は個人の責任より、現代社会の問題。その認識が学校でもっと広がってほしい」と願っている。
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 子どもの貧困の解決には教育や行政、地域の役割が大きい。本県で芽生え始めた動きを通して、課題や解決策を探る。

※書籍化された「だれも知らない~みやざき子どもの貧困」は内の主要書店などで発売中。問い合わせは宮日文化情報センター(電話)0985(27)4737。

写真説明/子どもの貧困をテーマに授業する佐土瀬教諭。問題解決のため、政治参加の重要性を伝えている=10月28日、都城市・小松原中

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