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食農激流MIYAZAKI

【第2部・地産地消はいま】(1)「総菜」需要高まる

2013年6月11日
■生活追われ産地選べず

 地域の農産物を地域で消費する「地産地消」が県内で提唱されて10年余り。健康や食の安心・安全、産地育成の観点からクローズアップされた新しくて古い概念は、県民にどう受け入れられ、日々の食卓はどう変わったのか。社会のありようと密接に連動し刻々と、複雑に変わりゆく消費の現場を見詰め直す。

 午後7時半、宮崎市生目台東3丁目、会社員藤本智華さん(32)方に夕食が並んだ。「何から食べよう」。小1と4歳の娘2人の皿に盛り付けられたのは、チキン南蛮、明太子スパゲティサラダ、筑前煮など7品。スーパーの総菜コーナーで買ってきたものだ。

 夫婦共働きで、藤本さんは朝8時から夕方まで働く。買い物や娘たちの迎えを済ませ、帰宅は夜7時すぎ。娘たちが寝付く10時ごろまでに風呂に入れたり、宿題を見たり…。料理に時間はかけられない。

 「本当に助かっている」。週2、3回は市販の総菜に頼る。本来料理好きで週数回は自ら腕を振るうが、作り置きできるカレーやシチュー、あり合わせの炒め物中心。「買った方がおかずが多くて、娘たちも喜んでいるみたい」。週の残りは実家の世話になる。

 藤本さんが総菜を選ぶ基準は味と値段。「材料産地はあまり気にしない」。加工品に原材料の産地を明記する義務はなく、表示してある総菜そのものが少ないからだ。県内のスーパー関係者によると、原料に外国産を使う例もある。

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 女性の社会進出により、1980(昭和55)年に618万世帯だった共働き家庭は年々増加。92年に初めて専業主婦家庭を逆転し、2012年には1068万世帯となった。人口減にもかかわらず全体の世帯数は増え続けており、高齢化や晩婚化による単身世帯の伸びを物語る。

 食卓を取り巻く景色が変わる中、市販総菜の存在感は増している。日本惣菜協会(東京都)によると、全国の総菜販売額は02年の約6兆8千億円から、12年は約8兆4千億円に拡大。全国の消費者1293人を対象にした調査で、九州圏ではおいしさ(68.2%)、価格(62.1%)が重視されているのに対し、「食材の原産地」は17項目中12番目の13.5%にとどまった。

 日本食生活協会(東京都)の上谷律子会長は「むしろ健康意識、安心安全志向の高まりで、地産地消への意識は高まっている」とみる。「忙しさの中で優先順位が下がっているだけ」

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 宮崎市内でスーパー3店舗を展開する「まつの」(松野晴義社長)では、7、8年前から総菜の原材料産地を可能な限り示す取り組みを始めた。共働きや単身世帯のニーズに支えられ、売り上げは10年前の1・5倍に増えたが、本県産と他県産とに顕著な差はない。ところが、3年前に設けた産直野菜コーナーは、予想の数倍の売れ行きで推移する。

 産地不問と地元志向-。相反する傾向に、松野社長は「TPO(時、場所、場合)で使い分けているのではないか。地産地消への意識は変わっていない」と感じ取る。

 宮崎市大淀2丁目、高校講師築地喜久代さん(44)も週に1、2度は総菜を買って家族の夕食を賄う。「メニューのバランスを考えると、産地では選べない」と語る一方で、トマトやキュウリなど、添える生野菜は産直を選ぶ。「やっぱり安心」だからだ。

 築地さんは言う。「地元の産地を買い支えたい思いはある。忙しくても手軽に実践できる地産地消があれば、みんなきっと飛び付く」

【写真】総菜が並ぶ夕どきの食卓。仕事や子育てに追われる家庭を中心に需要は増え続けている=宮崎市

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