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人生は黄金色~GW奮闘記

【1】椎葉村で民宿を営む 椎葉 喜久子さん

2013年4月29日
■亡き夫の思い胸に 笑顔と料理でもてなす

 どんなに機嫌が悪くても、笑みがこぼれる。そんな魔法のような山菜料理がある。もてなすのは、椎葉村下福良の民宿「龍神館」を一人で切り盛りする椎葉喜久子さん(63)。「ゆっくりできたというお客さんの声が一番うれしい」。はにかむ姿からは想像できないが、夫の死の現実から逃げたいと何度も思った。

 2012年6月18日午後7時ごろ、民宿を共に営んでいた夫英生さん=当時(70)=は、近くの田んぼをおこし、トラクターに乗って帰る途中だった。ブレーキが利かなかったのか、猛スピードで坂を下って川に転落。トラクターの下敷きになったまま息絶えていた。

 英生さんは民宿で提供する山菜から川魚、断崖絶壁で少量しか生えていない岩茸(いわたけ)まで自ら調達。山を生き、遊び、愛していた人だった。信頼していた夫の死は心のよりどころだけでなく、民宿の屋台骨を失うことでもあった。「どうして一人置いて逝ったのか。私じゃだめだ」。途方に暮れた。

 そんな時でも民宿の予約は入り続けた。常連客が「英生さんがせっかく民宿を残してくれたから、やめたらいかんよ」と励ましてくれた。顔なじみの釣り人が「料理に使って」とたくさんのワカサギを持ってきてくれる。そんな心遣いに支えられ、自然にこだわり客をもてなしていた夫の姿を思い出した。「ごめん、手抜きしないようにがんばるね」と心の中でわびた。

 そば打ちも夫をまねて始めた。今が旬の山菜も探す。「山に入ると、(英生さんが)シイタケや山菜を収穫した場所が足跡のように分かる。つらいけどね。そんな時に『お父さーん』と叫んでみる」

 午後6時、いろりのある部屋に夕食を運ぶ喜久子さん。イタドリ、ワラビ、ウド、タラの芽などの料理16品が並ぶ。客は生命力にあふれた山の幸に驚き、喜久子さんが語る料理方法や山で生きる苦労話に笑いも起きる。「どうしてこんな田舎に何度もお客さんがくるんだろう」と喜久子さんは言うが、これが人を引きつける魅力でもある。

 スプーン1杯のメープルシロップを喜久子さんにいただいた。英生さんが生前、自生するカエデの樹液から作ったもの。甘みやこくだけでなく、蜜が口中に転がるような温かな感触があった。英生さんの思いも、喜久子さんのもてなしとともに生き続けているような気がした。

◆     ◆

 安らぎや癒やし、発見を求めて県内各地に足を延ばす旅人や観光客を、特別な思いで迎える人たちがいる。過去の挫折や苦難に負けず、歩みを前へ、人生を輝かせたいと思うからこそ感動を与えられる存在になっている。ゴールデンウイークに合わせて各地で奮闘している人たちの人生模様を取材した。

【写真】喜久子さん(左)が採った山菜や手作りそばなど、こだわりの食事でもてなす。つらい経験をしたが「お客さんとの出会いが楽しみ」と笑顔で話す

 【メモ】宮崎市から椎葉村中心部まで、日向市経由(国道327号)で3時間20分、ひむか神話街道経由で3時間。龍神館は村中心部から県道上椎葉湯前線で30分。龍神館TEL0982(67)2261。

【1】椎葉村で民宿を営む 椎葉 喜久子さん2013年4月29日付
【2】高原町農事法人「はなどう」 黒木 親幸代表2013年4月30日付
【3】串間市「スローウォーターカフェ」 藤岡 亜美代表2013年5月1日付
【4】宮崎市「はにわ館」ボランティア 斉田 健さん2013年5月2日付
【5】宮崎市「青島ういろう」 本間チヨ子さん2013年5月3日付

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