「怒り」について

精神科医会 武田龍一郎

2017年09月07日掲載

 「かっとなってやった」とは粗暴な犯罪の報道でよく耳にする犯人のセリフですね。また最近、他人に激しい怒りをぶつけている場面を録音され、報道で話題になった人がいます。「怒り」に支配された言動は、相手側はもちろん、それを見たり聞いたりした人にも、不快な印象を強く与えるのです。

科学的にみた「怒り」

 生理学的には、「怒り」とは発汗、皮膚温上昇、心拍増加、血圧上昇、立毛(毛が逆立つ)などを生じる情動なのだそうです。生物学・動物行動学的には、闘争か逃走か(Fightor Flight)の感情。心理学のある学説では、「怒り」は恐怖や恥といった根源的でシンプルな感情を覆い隠すのに用いられる感情なのです。何らかの無意識の思惑(例えば、恥をかいたという傷つきを避けたい)で、人間関係における自分の立場を不利にしないために「怒り」をぶつけるというわけです。精神医学的には、本人の性格では説明できないほど怒りっぽくなっていることを易怒的(いどてき)と表現します。うつ病でも、認知症でもあり得る症状です。

「怒り」がもたらす苦悩

ヒトの「怒り」は、動物の進化の過程では重要でしたが、ヒトの社会、特に現代社会では急速にマイナス面が大きくなったのだと思います。ガミガミと怒る「頑固親父」という存在は、今や絶滅危惧種です。対照的に年頃の娘と仲良くデートする「友達パパ」の方が当世風ですよね。今の世の中では、理不尽なほどの「怒り」を周囲にぶつける人は、人間的な評価を落としてしまいます。
 例えば、職場で怒ってばかりいると周囲からは支持されず、部下をメンタル不調に追い込み、「ブラック企業」や「ハラスメント」のイメージが生まれ、その損害は計り知れません。逆に理不尽な「怒り」をぶつけられる体験が続いた場合、恐怖からトラウマ体験になってしまうケースと、不快に感じて強い恨みを抱き、復讐(ふくしゅう)としての攻撃性を相手だけでなく立場の弱い別の人に向ける(八つ当たり)ケース、これら2つのパターンで苦悩する人が多いと筆者は感じています。

気持ちを客観的にコントロール

 「怒り」への対策として筆者がお勧めするのは次の通りです。
①日頃から、自分の気持ちを言葉(文字)で表現しましょう。「メタ認知」と言う自己コントロール能力が鍛えられます。
②怒りを感じた時、直ちにその場を離れましょう。怒りは何時間、何日も続きません。
③相手を叱るべき時、叱る目的と方法、期待する効果を十分考えてから叱ります。つまり「怒り」と区別するのです。これらを意識すると、本能的・動物的に「怒り」をぶつけてしまう行動を、いくらか変えることができるはずです。

MEMO

怒りの感情について科学的、精神医学的に解説。気持ちをコントロールする方法も紹介。


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