棒状の岩石が重なりあう柱状節理

雄々しい岩肌に溶け込む女性的な清流

 雄々しい岩肌に女性的な清流や滝が溶け込む。谷間に差し込む陽光がつくる「陰と陽」。高千穂峡は天孫降臨神話の伝わる高千穂町らしい風景に出合える場所だ。渓谷のいたるところに神々の存在が感じ取れる自然美があり、訪れる人々を魅了する。

 高千穂峡は、阿蘇カルデラの火砕流堆積物を五ケ瀬川が浸食した渓谷。溶岩が急激に冷やされてできた「柱状節理」と呼ばれる柱状の岩壁が約7キロにわたって続き、独特の美観をつくっている。1934(昭和9)年、五ケ瀬川峡谷として国の名勝天然記念物に指定。年間約150万人の観光客が訪れる県内を代表する観光地だが、その景観は町の人々に最も愛されている。

 高千穂峡にある食堂「千穂の家」は、玉垂の滝の水を使った流しそうめんが名物。竹を割ったといに石清水を流し、そのひんやりとした食感が観光客の人気を集める。専務の佐藤雅高さん(44)は「ここの地下水はまろやかで、そうめんの口当たりも良くなる」と誇らしげに話す。近くには町の養魚場もあり、いきのいいニジマスやヤマメが育っている。

 豊かな水を生かし稲作も盛んだ。「高千穂から稲作が始まり全国に広がり、国が統一された」と高千穂神社宮司の後藤俊彦さん(65)は語る。

 町内各地区の神社では秋から冬にかけて国指定重要無形民俗文化財「高千穂の夜神楽」が舞われる。人々は秋の恵みに感謝し、翌年の五穀豊穣(ほうじょう)を祈願。そこには自然と共生し神々を身近にしてきた、いにしえ人の姿が垣間見える。

【メモ】観光夜神楽は高千穂町三田井の高千穂神社境内の神楽殿で毎夜、全三十三番の舞から主な4番を公開。時間は午後8~9時。料金500円、問い合わせは高千穂町観光協会TEL0982(73)1213。